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2004年3月号
written by 来素果森

赤い額

 遅ればせながらですが、明けましておめでとうございます。今年こそ、日本プロ野球界にとって良い年でありますように。

  さて、一応触れておかなくてはならないのが読売と入来のゴタゴタ。読売のデタラメ振りは今にはじまったわけではないが、入来のポスティング希望を、日ハムが何回も問い質したにもかかわらず、ごまかし通してトレードに出してしまおうとしたのは正直おそれ入る。もちろん日ハムにしても、読売という組織、及び球団代表氏をカケラも信頼しておらず、再三再四「入来がポスティング希望ならトレードはしない」事を念押しし、更に「入来がポスティングする事を盛り込まない事を明記した誓約書」の提出まで求めていた。しかし、"あの"三山読売球団代表から入来のポスティング問題はクリアされた(読売側で入来と話をし、球界のルールに従ったかたちのポスティングでしか日ハムは認めない、という事を説得した)と何度も確約され、いくら読売とは言えそこまで嘘をつき通す事はさすがに無いだろう…とトレードに合意したあげくのこの騒ぎである。先月と論旨がだぶって申しわけないのだが、読売及び球団代表氏にあえて問いたいのは、何でこんな馬鹿な対応をするか、という事である。これまた先月書いたように、読売という組織が総体として誠実とか良心とかいう言葉とは、一番遠いところに位置する組織である、という事は誰でも知っている。だから、たとえば球団代表氏が「ウチの球団にいてはポスティングは絶対不可能である。しかし、球界のルールにのっとったポスティングならば受け入れる余地のある球団もある。しかしながらどんな球団でも、主力選手を放出して取った選手が一年でポスティングで流出、なんて事を認めるわけがないしそんなトレードにOKする球団はない。だから、少なくとも今はポスティングの要求は胸に秘めておいて新天地で一年間頑張り、来シーズン終了後にあらためてそのチームとポスティングの話し合いをするのがいいんじゃないか」位の、いかにも親切めいていて実は腹黒い手法を取り、来シーズン終了後に起こるであろうドタバタ時には「人の心というのは変わり易いもので…。やはり入来君はメジャー挑戦の夢が捨て切れなかったんでしょう。いずれにしても今は他球団の選手ですから…」みたいなゴマカシをする、くらいの芸は見せてもらわないとお客は納得しないだろう。どんな客だそれは。もちろん日ハムは怒るだろうが後の祭りで、当然ポスティングは認めないだろう。が、それは当然で、もともと入来の主張が無茶なのだから世論的にも誰も味方につかず、事態は収拾したと思うが。少なくともこんなに恥ずかしい事にはならなかったろう。

 入来の「代理人交渉を要求したらトレードに出された」という告発を受けて読売はすぐさま「トレードは以前から交渉されていたもの」「入来の代理人の弁護士からトレード合意後、来季のポスティングを希望していて、そういう球団へのトレードを求めているという文書が届けられた。球団としてポスティングを条件としたトレードについて代理人と交渉する考えはない」との反論の文書を各マスコミにファックスで送った。モノホンの馬鹿が読売の広報にいる、としか思えない。この文書を見た日ハムが、どう反応するか考えなかったのだろうか。日ハムは元々入来がポスティング希望である、という情報をつかんでいるからこそ何回も確認しているわけである。

 日ハム・三沢球団代表取締役「三山さん(読売球団代表)と話をして入来がポスティングが希望なら、トレードを受けないという事だった。それならトレードはしない、と念を押した。そんなバカな話はない。もしそうなら利用されている。ゴタゴタに巻き込まれたくない」

                    (12/13ニッカンスポーツ)

 更に、球団代表のみならず、高山副代表と倉田運営部長にも再三確認していたそうである。その度にウソをついていたんだろうねえ。少しは恥を知りなさいよキミタチ。はともかくとしても「やっぱりウソだったんだ」とだまされた事を知った日ハムが、この広報部の発表にどう反応するか、本当に考えなかったのか? 誰も止める人はいなかったんだろうか…。

 その後、入来と日ハムが合意に達し、読売が公式に日ハムに謝罪して一応落着したが、トレードでウソついて謝罪して一応落着したが、トレードでウソついて謝罪なんて聞いた事がない。また、この謝罪にしても日ハムがトレード成立に必要な「選手契約譲渡協定書」への調印を見合わせ、トレードを白紙にもどす、又は新たな交換要員として岡島を要求する…といった切り札を持っていたからこそ頭を下げたわけで、もし、トレードが成立してから(正式に調印されてから)ウソがバレていたらまず間違いなく知らぬ存ぜぬで通していたと思う。異論ある人いないよね。

 正直今回、筆者はこれを書きながらかなりウンザリしている。これだけ隠しようのないバカをやられると、筆者の感想やら主観やら分析やらを書いたり発揮出来たりする余地がほとんどない。事実経過と関係者の発言等を資料を見ながら書き写しているだけで、読売の全てが証明されてしまう。いやしくもコラムを書いているものとして、こんなにつまらない事はない。変なグチになってしまったが。

 全然違うネタであるが、同じような気持ちにさせられたものをひとつ。週刊ポスト1月1・9日号の王・長嶋・金田の名球座談会。原の辞任に話がおよんだ時の長嶋の発言。

 長嶋 責任を取らされたのではなく、監督としての義を貫いた、とボクは 解釈しています(中略)ファンの皆さんにお詫びしたいという気持ちが原監督の中にあったわけです。巨人の監督としては自然な感情だと思いますね。

 金田 球団は原の辞任を慰留しなかったのか?

 長嶋 もちろん球団サイドは必死になって引き止めましたよ。でも原監督の辞意が固かった。結果、ああいう交代劇になったんですよ

 金田 本当か?あのチンピラ呼ばわりされた三山代表となにかあったんだろう

 長嶋 そりゃ、多少は感情のもつれがあったようですが、それはちいさなことですよ(後略)

 長嶋よ、あえて問う。君もつい数年前までグラウンドに立っていたユニフォーム側の人間ではないか。しかも原は君の後を継いだ人間じゃないか。誰知らぬ者がない、背広組の思い上がった言動(原は江本に「僕は人生であんなひどい事を言われた事はありませんでしたよ」と語ったそうである)と衝突した原が、プライドを傷つけられて辞めた、という事実を間違いなく知っているはずの読売終身名誉監督が、おそらくはナベツネあたりに「こう言え」と指示された寝言をオウムのように繰り返していて(スポーツ紙等でも同じようなコメントを連発していた)恥ずかしくないのかい?星野前阪神監督の「現場を、そして監督という業務をどう思っているんだ」という怒りを共有できませんか。なんでそんな読売の下僕に成り下がるような生き方しか選択できないの?

 この、あまりのおとぎの国発言に週刊ポストも頭をかかえたらしく、見出しに「原辞任は"感情のもつれ"が原因」と対談内容とかけ離れたものをつけている。まあ、その方法か長嶋の全ての発言に最後に(笑)をつけるかしないとどうにも救いようはなかっただろう。

 イラクの問題なんかで「日本人も血を流さないと」みたいな論調をときどき見かけるけど、流してるじゃん。ミスターが。彼の顔は読売に土下座する為地ベタにこすりつけられていて血で真っ赤だよ。                           (この項終わり)

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