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2000年2月号
written by 来素果森

けらいのひとりもいない王様(2)


 まずは、遅ればせながら明けましておめでとうございます。20世紀最後の年、今年こそ少しでも日本のプロ野球が健全かつ建設的に発展し、狭い島国の中の頭の悪い人々の自己満足のためだけでない、世界に誇れる存在になるために、まことに微力ではありますが、ペンを以て力を尽くさせていただくつもりです。カネや権力をはじめとした様々な武器を持っている”日本のプロ野球を私利私欲のために喰いものにしている”方とくらべると、当方の武器は真実と理想を追求する心ぐらいしかありませんが、少なからずいらっしゃる賛同して下さる方々のはげましを頼りに頑張りたいと思います。今年もよろしくお願いします。

 さて、カネと権力をバックに日本のプロ野球村を汚物…いや違った私物化していた村長のナベツネ太郎(略称ナベツネ・以下同)であったが、黒船(グローバリズム)が上陸し、村の人々やお客さまたちがその考え方に徐々に染まっていく事が我慢ならなかった。なぜなら、それはそれまでナベツネが村を統治してきたイデオロギーと真っ向から対立する思想だったからである。「村の中で一番であること」が最大目標であるナベツネ村長の思想と、「世界の中で強者である事」が目標であるグローバリズム。もし後者の考えが勝つと、実質的にナベツネが行なってきた「毎年新しく開墾される田は一番カネを出せるものが一番よい田を買えるシステム」や、「たくさん米が獲れた優秀な田を金を積めば買える」システムはくつがえさせられる事必至である。なぜか。それはあくまで「村の中で一番であること」のためにつくられたシステムだからである。もちろんそれだけではなく、村に割り当てられた電波を特権的に利用している事などの、様々なナベツネ流統治による不公正さや歪みは、どんどん否定されていく事になるだろう。これに気づかないほどナベツネ村長は愚かではない。だからこそ、それこそ新聞の社説欄まで使って徹底的に反対するのだ。おわかりいただけたであろうか。

 日本と同じく、オリンピックの野球・ベースボール部門においてプロが全面的に協力しないのはアメリカである。しかしその理由は選手組合の力とか各選手に何かアクシデントがあった場合の補償をどうするか…といった点が問題になっている、と断片的にしか伝わってこない。はなはだしい愚か者に至ってはこの点(アメリカのプロが全面的に参加してこない点)をもって、日本のプロも全面的に参加する必要はない、との根拠にしたりする。

 全くわかっていない。

 アメリカのプロ野球選手及び機構がオリンピックに全面参加・協力する必要がないと考えているのは、メジャーリーグそのものが(世界で唯一の)グローバルな存在である、と考えているからである。

 ついでに付け加えておくと

 今までもずっとそうだったし、これからも当分は変わらないであろう真の世界一を決定する場(サッカーで言うと国単位のワールドカップ、チーム単位ならトヨタカップ)が野球においてないのは、アメリカ大リーグから見て日本を含む他の国のプロ野球が、マイナーという認識しかないからである。

 だから彼らは自らのリーグをメジャーリーグと称し、そこでプレイする選手はメジャーリーガーと称しているのだ。

 後者はおいおい説明していくとして、まず前者だが、ほとんどの読者は御存知と思うがメジャーリーグには日本のプロ野球にあるような「外国人枠」がない。ラテン系やアジア系を含め、世界の様々な国から選手を発掘し、チームを構成している。今年巨人に入って大活躍した上原がメジャーリーグからも猛アタックを受け、最後まで悩んでいたのは記憶に新しい。また今年には、東洋でベースボールの盛んな日本、という国で公式戦を行なう事も決定した。これらは全て「アメリカのプロ野球」ではなく自らをグローバルな存在と考えているからこそ出てくる発想であり行動だろう。また、村のたとえ話のところでも書いた事だが、各チーム・及びリーグの基本的な発想が「世界の中で強者である事」を目指す、という点で一致しているので、システム造りも当然それがベースに構築されている。すなわち、チームの本拠地のある場所やスポンサーに入る企業の規模等で当然ながら各チームの戦力にはバラツキが出る。これを放置しては常に資金力のあるチームのみが勝ち続ける事になり、各チームの切磋琢磨による進歩、リーグ全体の進歩が期待できない。だからこそ(1)FAで選手を獲得できたチームは、その選手の実績に応じてドラフトの指名権を選手を放出したチームにゆずる(2)ドラフトは常に前年度ワールドシリーズで敗れたチームが所属するリーグの最下位チームから指名権が与えられる。(3)全米ネットのTV放映権はコミッショナーが管理し、各チームの収入のバラツキを出来るだけ出ないようにする(4)飼い殺しを防ぐため、メジャー登録されなかった選手を他のチームが起用する事を前提に、自由な移籍を許可する、などのシステムを造り出している。逆に言えば、これらのシステムは全て”いかに各チーム間の戦力差を縮めるか”のためのシステムであり、何故そうしなければいけないかは”世界の中でメジャーのベースボールが強者である為”である。いかに日本のシステムと目的及びシステム自体が違い、日本のシステムがいびつなものであるかが御理解いただけるであろう。(1)(2)(3)(4)の部分、日本においては全て反対か無いかどちらかで、それは全て村の中での金持ちを有利にするシステムでしかない。FA制度にしても、日本のそれはアメリカのそれをマネして導入されたモノであるが、その精神はそれこそ天と地ほども違う。誰でも知っているようにアメリカでは、チームと選手の契約の権利や条件が、球団側に一方的に有利なシステム〜結局のところ球団側の条件を受け入れなければ、選手には引退する自由しかなかった〜だった事に対して、選手側の異議申し立て、というカタチでFA制度が導入された。オーナー側と選手側の激しい対立はあったものの、グローバリズム、世界の中で強者であろうとする、という点では両者の志は一致していたので、(1)(2)(3)(4)の部分は比較的簡単に合意されたのだ。対して日本はどうだろう。これまた誰もが知っているように、要するに落ち目になった巨人がカネの力で勝利が買いとれるように、リーグ脱退の脅しをかけつつ強引に導入されたものである。そこには読売のエゴ以外何の思想もない。だから、(1)(2)(3)(4)も当然考慮されない、どころかむしろ反対のベクトルで事が進んでいる。世界の中で強者であろうという発想がないどころか、むしろ禁句なのだ。やれやれ。

 これで、なぜ読売の某オーナーがなぜあそこまでわめき散らしているかがおわかりになっていただけたと思う。正解に一番近かった鬼田川裕哉氏には、編集部から何かプレゼントを贈ってもらいます。ではまた。

注/上記のプレゼントは本誌掲載時のものをさします。

(この項終わり)

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