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語るべき事の無さすぎるシリーズ ”一発勝負のトーナメント戦は何が起こるかわからない”というのは、野球に限らず様々な勝負事で言われる事である。これを逆説的に言うと”135試合たたかって勝ち抜いたペナントレースの勝者は、真の強者である”という事である。日本シリーズというのはそういった前提のもとにある戦いであり、たとえ結果が一方的であったとしても、お互いが(少なくともその年の)強者である事を戦いにおいて証明しないといけない。ところが、今年の日本シリーズはどうだったろうか。勝者たるダイエーホークスはさて置くとしても、中日ドラゴンズの不振・不調さは、シリーズに出て来る資格すら疑わせかねないものであった。全く打てない打線に、勝負どころでエラーを繰りかえす守備陣。なるほど、たしかにダイエーの投手陣は予想以上に好投した。しかしながら、五試合戦っての中日のトータルのチーム打率は、二割すら切る(.196)数字におさえられるほどの投手陣か? というとそれは疑問である。10四球、とダイエー投手陣が自滅のカタチになった第二戦の数字を差し引くと、チーム打率.170。関川.095。ゴメス.200、福山.111、李.167。井上に至っては、全試合スタメンで出ながらとうとうヒットが一本も出なかった。これは、チームとして調整に失敗したとしか言い様がないだろう。優勝決定後間が空いた事はたしかだが、これは言い訳にしかならない。プロとして恥ずかしい試合をしてしまった事に、中日はチームとして大いに反省してもらわないといけない。正直、黒潮リーグのほうが面白そうですらあった。 ダイエーにしても決して完璧ではなかった。初戦、工藤は9回を投げきって完封したが、シリーズの定石で考えると8回は篠原、9回はペドラザといったシリーズにとって欠かせない選手をここで調整を兼ねて登板させておくべきだったろう。藤井もこの中に加えてもいい。なんといっても久々の実戦の場であるし、いずれもシリーズ未経験の投手。いきなりせっぱ詰まった場面でマウンドに上げるよりも、比較的楽なシチュエーションのここで投げさせて調子をチェックしておくのがシリーズにおいての戦い方というもの。王監督もまだまだ甘いな、今後の展開によってはキーポイントになるのではないかな、と思ったのだが、残念ながらその後の四試合いずれもそういった緊迫した場面自体がなかった。 もっとも、思わずうならされるような好継投もあった事はつけ加えておかなければ不公平だろう。第3戦、それまでノーヒットにおさえていた永井をスパッと切り替えたあたりである。この場面、初回からとばして来た永井にやや疲れが見えて来ていたとは言え、リードしている状況でもあり、永井を信頼してそのまま投げさせる(代打をおくらずに、そのまま打たせる)、という手もたしかにあった。代打をおくったからといって、確実に点が入るとは限らないわけだし、事実福留のエラーがなければ追加点は取れなかった。が、それはあくまで結果論である。たとえ点が取れずに、逆に勢いづいた中日に逆転されるような事があっても筆者この交替を支持したと思う。ダイエーは、ペナントレースを藤井・吉田・篠原・ペドラザの継投で勝って来た、と言っても過言ではい。それが勝ちパターンであり、チームの力である。ならば、そういう試合運びをするような展開に持ち込むのがスジと言うものだろう。去年のシリーズ総括の時にこのコラムで書いた『シリーズは公式戦の延長で、更にグレードの高い戦いをするべきだ』という筆者の主張を覚えていてくれた人は、正にこのシーンこそがそういうシーンである。という事が御理解いただけるだろう。 ペナントレース中にこういう場面(と言ってもパ・リーグはDH制をとっているのでこういう場面はないのだが)になったら、これは間違いなく続投だろう。勝利を目指す、という目標は共通にせよ、選手個人の”記録”というものも大事だからだ。選手にとって、もさる事ながら観客のために、である。たまたま観にいった試合でノーヒットノーランが達成されたら、観客にとってもこれほどラッキーで、印象深い事はあるまい。、ましてやそれが日本シリーズなら…という視点から、ややこの継投に批判的だったのは三冠王・落合である。これはこれで大いに説得力ある主張だ。また、彼の出自を考えるとよくわかる。落合の全盛時代というのは、間違いなくロッテでずば抜けた数字で連続三冠王をとった頃であったが、広岡西武の時代と重なったせいもあって、優勝には遠かった。落合がファンに感動を与えるには、自分のプレイ(主にバット)以外にはなかった。そういう信念で超一流の選手になった落合が、永井のノーヒットノーランへの挑戦を期待するのはある意味当然であろう。が、筆者がそれでも王監督の策を支持するのは、ひとつには投げていたのが永井であった事もあった。これが工藤だったら判断も微妙に違うと思う。何より王監督自身が代打を送らなかったとも思うが、工藤ならば篠原・ペドラザにつなぐのと同じ位高い確立でおさえ切れる可能性が高い。しかも、誰もが認めるエースである。永井には今後の飛躍の糧としてもらう事にしよう。 まことに困った事に、このシーン以外語るべきシーンがない。シリーズの行方を決定づけた第六戦の3回表、ダイエーが一挙6点をとったシーンにしても、ピンチをつくったのは野口のエラー、傷口をひろげ、逆転を許したのは福留のエラー、試合及びシリーズを決定づける大量点を許す事になってしまったのは井上のエラー(記録上はエラーでなかったかもしれないが、あのフライをとれなかったのは完全に判断ミスによる失策である)、と締まらない事おびただしい。あの場面、普通に守っていたら明らかにダイエーには一点も入っていなかった。難しい打球ならともかく、ノッカーが狙って打ってもここまで真正面にはとばないだろう、と思われる福留へのゴロや、かなり高く上がったライトフライを落とした井上の守備は、はっきり言ってプロのレベルにない。日本シリーズでは絶対許されないプレーだと言っておこう。 凡戦続きでドッチラケだった去年の横浜─西武の日本シリーズ。ファンの楽しみを奪う予告先発やら、キモチの悪い監督同士の友情パフォーマンスやら、これを下廻るシリーズはそうそうないだろうと思っていたが、どうやらそうでもなかったようだ。4─1という決着は、95年のヤ─オ、96年のオ─巨、97年のヤ─西とここ5年でも比較的多いが、いずれも勝者がその強さを発揮しての決着で、ゲームとしての、シリーズとしての面白さがあった。いずれも”格が違うよ”という結果の4 ─1であった。今年は、両チームにそんな格の違いがあったとは思えない。事実、シリーズ前の予想でもむしろ有利と思われていたのは中日であった。結局、中日が一方的にコケたのでこうなってしまった、という結論に異議をはさめる人はいまい。 気が早いようだが、来年こそは真の強者同士の日本シリーズを見たい。 (この項終わり) |
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