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オリンピック予選を観て考えたこと
1900年代のラストイヤーのニッポンのプロ野球のペナントレースは中日とダイエーがそれぞれ制した。詳しくはシリーズ後の次号以降で触れるとして、両チームの共通した強味、勝利への原動力を挙げておくと中継ぎ・抑え投手陣がしっかりしていた、これに尽きるだろう。中日では右の落合・宣と左の岩瀬・前田・サムソン、ダイエーではMVPすらウワサされる左の篠原・吉田に右の藤井・ペドラサ。去年の横浜に佐々木・島田・五十嵐がいて、黄金期のヤクルトに野中・広田・加藤・山本・高津(伊藤)がいた事から考えても明らかなように、近代野球は”中継ぎ・抑えがしっかりしていないところに覇権なし”である。某銭ゲバ野球を標榜するチームが、ズバ抜けた戦力を持ちながらこの部分の整備を怠り、その場しのぎの配置転換をくりかえしたあげく優勝を逃しているのも当然の結果だろう。選手諸君にはまことに気の毒な事ではあるが。
さて今回のメインテーマはもうひとつ大きなスケールの、オリンピックがテーマである。周知の通り、9月11日から1週間にわたり韓国・ソウル市の蚕室運動場で行なわれた第20回アジア野球選手権大会兼シドニー五輪アジア地区最終予選において日本は、韓国に次ぐ準優勝の成績を残し、公開競技だった84年のロサンゼルスオリンピックから5大会連続となる出場切符を獲得した。しかしながら特に決勝リーグにおいては苦戦の連続で、初戦の台湾戦は9回裏の2アウトまで1対1のタイスコア、七番・沖原が三塁フライですわ延長、というところで思わぬエラーを足場にしてのサヨナラ勝ち。二戦めの中国戦も6回まで2安打と打線は沈黙し、むしろ押され気味の展開。相手がプロ野球オールスターをそろえてきた韓国戦では、5回まで2安打・1失点と抑えていた近鉄・小池が降板するとすぐ逆転される、といったように正直歯車がひとつ噛み合わなかったら予選通過もおぼつかなかった。特に打撃面での弱さが目立ち、終盤劣勢だった対韓戦、韓国がくり出すプロ野球界を代表するようなストッパー陣は、ハタ目にも全く打てるようには見えなかったし、それ以外の試合でも長打を期待できる雰囲気は感じられなかった。早い話、この決勝リーグで韓国があげた総得点は17点、一試合平均5.6点に対して日本の総得点は8点、一試合平均2.6点である。たとえば台湾戦、松坂はたしかによく投げていたが韓国戦で出たようなエラーで思わぬ失点があったら果たして打線は挽回できたであろうか。やったー、オリンピックだ!! とうかれる前に、来年の本番に向けていま一度考え直さなければならないと思う。
ズバリ結論から言ってしまうと、誰の目にも明らかだとは思うが、プロ野球界の全面的協力がない限り本番でのメダルはとても期待できない。野球評論家の豊田泰光氏は週刊ベースボール10/4号「オレが許さん!」で『本番では敵は韓国だけではありません。キューバ、アメリカ、オーストラリア、オランダ、イタリアetc。今回の予選メンバーで戦ったら、間違いなくメダルはとれません。下手するとイタリアより下になちゃうかもしれません』と述べられている。スタッフとして(今回の)全日本チームに深くかかわり、決勝リーグのテレビ解説者として他のチームの力も認識した豊田氏の、まさしく実感だろう。また、続けてこうも語っている。『ここはプロの協力が何としても必要です。簡単なんです。ペナントレースを中断すればいいんです(中略)今回の五輪予選の盛り上がりで日本のファンのシドニーの野球競技への注目度はグンとアップしました。そういう時にプロがケチな料簡を起こすようだと、プロ野球は悪者扱いされますよ。野球にプロもアマもないんですよ。プロよ、五輪に目覚めよ!』
──特に解説する必要もないほど明確で明快な論旨である。別に半年にわたってオリンピックをやっている訳ではない。前後の調整区間を最大限大きくとったとしてもペナントレースの中断が一カ月を越える事はあるまい。筆者はそれこそオリンピック・イヤーは今後その年のみ年間130試合制をとってもいいと思うが、天候や外気温に左右されにくいドーム球場がふえてきている事もあるし、ペナントレースの開幕と閉幕がそれぞれ二週間ずつ繰り上がり、繰り下がっても試合の消化にさほどの影響はないと思う。アメリカ大リーグのように広大な米大陸をとび廻って162試合戦っているわけではないのだから。
実際のところ、事実上”オリンピックに向けてプロアマ混合メンバーによる最強のチーム造り”の最大の障害になっているのが、例の自社の新聞の拡販以外には何の価値観も持たない某オーナーである事は、たとえあなたがどんなに巨人軍に愛着を持っていようとも否定し難い事実だろう。しかもその理由も「(接待疑惑や、商業主義に陥りがちだという批判の多い)サマランチ会長の金儲けに協力する必要はない」という正に噴飯物の理由で、たとえばドラフトにおいての取り決めの十倍以上、まさしくケタ違いのカネで有望新人を買い漁っている某オーナー氏にそう言われるのは、サマランチ会長にしても痴漢が連続強姦魔に説教されるような気分だろう(笑)。たしかに現在のオリンピックに問題がないとは言えない。候補地の選定方法をはじめとして改革すべき点は山ほどある。しかしながら、それとこれとは全く別である。それこそ”世界で最大部数の新聞社”のドンなのだから紙上で批判すべきところは批判すればよいのではないか。残念ながら、世界的には日本を代表する新聞はやっぱりA紙で、Y紙は誰にも相手にされていないのが現実ではあるが。または、現在のオリンピック(別にオリンピックに限らずスポーツというものは本質的にそうなのだが)なんてしょせん娯楽なのだから、報道をボイコットするのも一方策だろう。少なくともそうすれば「サマランチの金儲けに協力」する事にはならないはずである。ところが実際には本紙はもちろんの事、別刷りの特集や系列スポーツ紙でも散々取り上げ、自社の発行物の拡販のためにはオリンピックを骨の髄までしゃぶっておいてのこの御高説。人間、恥を忘れようとするとどこまでも忘れられるんだなあ、とは思う。
ところで、読者の方々はここでなぜ某オーナーがこれほどまでにオリンピックに協力する事に反対しているか、が逆に理解不能なのではないか。前述したようにペナントレースのスケジュールをちょっと変更するだけで協力は可能だし、もし日本のドリームチームをつくるとしたら巨人からは少なくとも松井・高橋・上原の三人は間違いなく選ばれ、世界にアピール出来ると思う。今回のアジア予選のように、ペナントと平行してオリンピックが行なわれたらそれは打撃だろうが…。
この答えは宿題としておく。再来月号で解答を発表しようと思うが、実はかなり本質的な部分に問題がある。目先の観客動員とかそういった小さい事ではない。このコラムをある程度読んでいる人にはわかってもらえるかな? とも思うが。
完璧な解答を編集部に送ってくれた人は誌上で発表の上薄謝を差し上げます。 (この項続く)
※上記の募集は連載当時のもので、現在は行なっておりません。
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