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1999年10月号
written by 来素果森

”留任”の影で涙する人々


 さて、前号では日本のプロ野球の恥部のひとつである”審判の巨人びいき”を急遽取り上げたため「長嶋監督の本当の存在価値」の続きを一回とばしてしまった。今回その続きに入る前に、少しだけ”審判の巨人びいき”に関しての補足をしておきたい。週刊現代8月14日号に掲載された記事中のデータであるが、特に巨人寄りとウワサされる渡田均・井野修・小林毅二・杉永政信の4人が球審を務めた今シーズン前半の巨人がらみの試合の巨人の勝率は何と7割5分!。21勝7敗という異常なペースである。それ以外の11人で23勝30敗、と5割にすら届いていない事を考えるとなおのこと異常さがきわだつ。よっぽどの野球ファンでなければ(でも)審判の名前まで意識しながら観戦する人はいないだろうから、たまたま巨人戦での勝率が高い人のみをピックアップしてとりあげていると誤解されても困るので、一応四人の紹介を引用しておく。まず渡田審判。去年の5/10の東京ドームの巨×中戦での9回裏、一点差につめ寄った中日が一死一・二塁のチャンスを得て、代打神野がライト高橋の頭上を越えるヒットを打った。二塁走者の大西はやや判断悪くスタートが遅れたもののまあ本塁はゆうゆうセーフ…と思われたがアウト。と判定した球審その人である。思い出した人もいるだろう。この時は中継が日テレだったのでVTRのリプレイはそんなになかったが、すざまじいアウトだった(笑)。コマ送りにすると大西がベースに触れてから5コマ位して捕手・村田がタッチしているのだが、それでもアウトなのだから。あまりのバカバカしさに星野監督は抗議すらほとんどしなかった。まあ”札付き”の審判である。井野審判は、96年10月24日、巨人が一勝三敗と絶体絶命でむかえた対オリックスの日本シリーズ第5戦の4回表の巨人の攻撃、一死・三塁で井上の打ったセンター前の小飛球をセンターの本西がスライディングキャッチした時に”ヒット”と判定した、そう、あの塁審である。カンカンに怒った仰木監督が守備中のナインを全員ベンチに引き揚げさせ、あわや日本シリーズで放棄試合、という騒ぎになったので印象深い。これも前回とり上げた中日戦の時と同じくかなり余裕でキャッチしている。VTRで確かめるほどのきわどさすらないプレーだった。ちなみに、今年の6/1の中×巨戦で一点差にせまった中日が無死満塁のチャンス、代打渡辺初球自打球足に当ててファウル…と誰もが思った時にフェアかファウルかでもめ、審判団が協議したのだがこの時に一番よく見える一塁塁審が彼だった。協議の結果がフェアだったのはいうまでもあるまい。小林審判は、去年の7月11日の東京ドームでの阪神戦、阪神の捕手の矢野が本塁に突入してきた仁志を完全にブロックし、誰もがアウトと思ったプレイをセーフと判定した球審である。阪神・木戸コーチの退場騒ぎがあったのでこれも覚えている人も多いだろう。杉永審判は、先月とりあげた例のメイのプレイをセーフと判定した審判である。この人は実はその2日前、7/16の阪神戦でガルベスの明らかなビーンボール(ガルベス自身も試合後、ビーンボールだった事を認めている)に対して、故意死球→即退場というルールを適用せず、怒った阪神にセ・リーグ連盟に提訴されている。今にして思えば、提訴された事に対する逆うらみが、2日後の常軌を逸した判定につながっていたのかもしれないが。

 こういった具体的な数字をみると、野村監督や星野監督が「巨人と戦う時には9人対13人の戦いになる」というのがよくわかるし、あのデタラメな采配の巨人がそれでも二位につけている理由もわかる。また、こういった状況に何の手も打たない日本のプロ野球機構というのは、骨の髄まで巨人の飼い犬である事も。普通に考えれば、上記のような明らかにおかしな判定をする審判にはマークをつけ、更にその審判が球審を務めた試合で巨人の勝率が異常に高い、という結果が出れば、その段階で何らかの処置をとるのが当然だろう。形式だけになっているという批判はあるものの、最高裁の裁判官にも国民審査はある。審判も、テストに一回受かったら定年までおつとめOKではなく、今回のように特定チームに片寄った判定をする審判や技術的にプロのレベルに達してない審判は排除していくシステムをつくらなければプロ野球の名が泣くというものだろう。プロ野球の”プロ”とは審判も当然含まれるものであるから。

 冗談抜きで提案するが、幸いにも…でもないのだがメジャーリーグで契約のもつれから大量に審判がクビになった。上記のような審判諸氏にはお引取り願い、彼らに日本でウデをふるっていただくのはどうだろう。巨人は負けがこむだろうが、プロ野球自体が面白くなる事はうけあいである。一考以上の余地はあると思うが。

 さて、話をもどって「長嶋監督の本当の存在価値」である。周知のとおり、来年以降の続投がナベツネによって発表されてから巨人は一気に勢いを失い、ミス続出のヤクルトを更に上廻るミス続きで三連戦三連敗をくらうなど(9/3〜9/5)、優勝争いをしているチームとは思えないダッチロール状態になった。選手達に長嶋監督がどう思われているかを如実に物語っている。七連勝のあとの反動だ、と強弁する人もいるかもしれないが、負け方が違う。TV等で観ていた人には明らかだろうが。サラリーマン諸兄には覚えもあろうが、組織において上司が無能である事ほど部下のやる気を阻害するものはない。去年のいきさつから考えて、巨人ナインは優勝して花道さえつくってあげれば長嶋監督は勇退する、と信じていたと思う。ところが、今シーズンの結果にかかわらず留任、との報にみるみるうちに萎えてしまったのだろう。お気の毒ではある。それぞれ表現者であり、プレイヤーである選手達にとって、監督が選手時代にどういうプレイヤーであったかなんて事ははっきり言ってどうでもいい事である。重要なのはあくまで監督としてどうで、自分に何を与えてくれるかなのだから。松井自身が話している事だが、一年で長嶋監督と野球の話をしたり指導を受けたりするのは一〜二回だそうである。現在の巨人にとってかけがえのない存在であるはずの松井ですらそうなのだから、他は推して知るべしだろう。球界きっての頭脳派投手である江夏が、南海在籍時代に「野村監督の話はクジラと同じで、全てが役に立つ」といってベンチにいる時にそれこそ一言一句ききもらさないようにした、というエピソードや、ヤクルトで試合中に必ず古田を自分の近くに座らせて教育した野村監督とくらべてどちらがその座にふさわしいのか。巨人投手陣の中では頭脳派であった桑田がどんどんつまらない投手になっていってしまっているのも、結局独学の悲しさ、というか勉強したくとも師なし、というところが大きい。もし桑田に借金がなければ、もうとっくにおん出ていただろう。

 外からも内からもピエロ扱いされる事に耐えられるものだろうか。     (この項続く)

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