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1999年9月号
written by 来素果森

”誤審”と”巨人びいき”の差


 本来は先月の続きのはずだったが、今月はとうとう審判の謹慎にまで事態が大きくなったいわゆる”巨人びいき判定”について考える事にする。ただし、先月書いた事は”シチュエーションを読むツボ”であるので忘れないように。

 さて、オールスター前の前半戦の最終戦、7月22日の東京ドームでの巨人─中日戦での8回裏、マルティネスの打った浅いレフトフライをワンバウンドしてからの捕球であるとし、ヒットと判定したのが今回の騒動の直接の原因であるが、伏線はその前、7月18日甲子園球場での阪神--巨人戦にあった事は御存知の方も多いだろう。6回表、高橋のファーストゴロ、ベースカバーに入ったピッチャーのメイに球は送られ誰もが3アウトチェンジと思ったのだがなぜか判定はせーフ。塁審の説明ではメイがベースを踏んでない、との事だった。(当日テレビ中継を観ていた人は何回もくり返しVTR再生されたから疑問の余地がないだろうけど)明らかにメの右足はベースに触れている。というかくい込んでいる。「ボクは右足でベースを蹴った」というメイの証言通りで、誰がみてもアウトである。犬でもそうジャッジするだろう。この判定をみた星野監督は「巨人に判定勝ちしようと思ったらイカン。KO勝ちしないと」とボクシングにたとえてあからさまな巨人びいきの風潮に皮肉たっぷりのコメントを残していた(7月19日)。そしてこの日につながるわけだが、外野手が直接捕球かショートバウンドしたかでモメる時というのはほとんどの場合グローブがグラウンドに垂直に接触している場合。グローブが地面に触れていない場合に見誤るというのはほとんど例がない。というか、これを本気でヒットと思うのならば、ちがう職をさがすべきだろう。とてもプロとしての技能があるとはいえまい。

 巨人がからむからまないにかかわらず、審判の判定に問題があるとビデオの導入がつねに世論をにぎわす。筆者はこれまで、『誤審も野球のうち』と考えビデオの導入には反対してきたが、このようなあからさまな巨人びいきが横行してくると、それから他チームを守るためにも判定にビデオを活かしたほうがいいのではないかと思うようになってきた。その位しないとこの風潮は変わらないのかもしれない。さすがにビデオを前にしては、公平な判定を下さざるを得まい。

 だいたい誤審というものは、流れや勢いにつられて起きてしまう性質のものである。たとえば、三遊間深くにゴロがとび、とびついたショートが立ち上がりざま矢のような送球─こんな時、ほんの少し打者走者の足が先にベース上を駆け抜けたように見えてもつい塁審はアウトを宣告しがちだし、内野守備の華であるダブルプレーでセカンドのフォースアウトを含む時、多少二塁に入った内野手の足がはやく離れて一塁へボールが転送されても、まず併殺は完成されたとみなされる(TV中継をビデオで録画してコマ送りしてみるとよくわかる)。いずれの場合にも、よほど重大なシーンでもない限り攻撃側のチームもまず抗議はしない。これはスポーツという”ショー”であるプロ野球としてはある意味当然ですらあり、お客さんに「いいプレーを体験できた」と思わせられれば必要悪ではあるが、容認の範囲内だからだ。もちろん、完全にセーフのものをアウトにしたらお客もシラけるだけで、シロウト眼でみて”どっちにもとれる”場合の話である。ストライク・ボールの判定でも同じで、ゾーンからわずかに外れていてもタマ自体のキレが素晴らしく、イキのいい球がくればついつい審判はストライクのコールをしてしまうものだ。これも全否定するつもりはない。これらをいちいちビデオでスロー、コマ送り再生し『1/1000秒足が離れるのが早かったからセーフ』とか『ストライクゾーンから1/10ミリ離れていたからボール』などとやられたらたまったものではない。しかし、今回問題になったケースは全く違う。誤審につきものの流れや勢い、また結果(VTRや写真で証明された)など全てが阪神・中日側にあった。たとえば阪神戦の例で言うと、もし誤審が存在するとしたらメイがベースにタッチしていないのにアウトといってしまうケースなのだ。おわかりいただけるだsろうか。タイミング的には当然アウトで、現実にベースタッチもしている。それをセーフと判定するのは、著しくかたよったベクトルでプレイを判定していなければ出来るはずはない。ゆえに、これはいわゆる誤審ではない。明らかな”巨人びいき”判定なのだ。

 日刊スポーツもいかにも人が悪く、19日の紙面でメイの件について長嶋監督の「あれはセーフ。三塁ベンチからよく見えますから」というコメントをのせている。これでは日本中の人に長嶋監督は眼も悪いのがバレてしまうではないですか。某夕刊紙みたいに『デキレースの片八百長』とまではいわないけれど (この項おわり)

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