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1999年6月号
written by 来素果森

中日五馬身リードのセ、消耗戦のパ


 いつの間にか7年近く続けさせてもらっているこのコラムの中でも、4回に渡ってワンテーマを取り上げた事ははじめてではないか。ダイエーの三人の選手への疑惑からはじまった”スパイ騒動”。前回までに歴史や検証を含め大体の事は語りつくしたので今回はあえてくり返さないが、ひとつだけ強調しておきたいのはこのコラムで書かれたような「球界の常識」をほとんどのマスコミが報道しなかった事。世界的にも類がないほどメディアが発達したこの国でのこのていたらくは、是非とも記憶にとどめておく必要があるだろう。もちろん筆者も全ての媒体をチェックしたわけでも、またチェック出来るわけでもないのでどこかではあったかも知れないが、少なくともこの常識が常識として認知される事は最後までなかった。せめて当誌の読者の方々だけでも真実を知っておいていただけると幸いである。というか、このコラムのコンセプトは一にも二にもそこにある。様々な理由で大手メディアが取り上げない、しかし真実は読者に伝えるのがこのコラムの存在理由である。時々、読者の方々から『このコーナーはなぜ野茂の大リーグ挑戦の事を取り上げないのか』といったような質問をいただく事もあるが、答えは簡単で、ありとあらゆるメディアがその功績を理解し〜勿論持ち上げ過ぎのものもあったが〜、報道しているのだからここでわざわざ取り上げなくても十分、というのがその理由である。もし大半のマスコミがその価値に気付かなかったら、毎号増ページを願ってでも賛美を惜しまなかっただろう。また、言うまでもない事だが話題になっている事は全て取り上げないわけではない。狂ったドラフト制やFAの事はこれからも取り上げつづけるだろうし、イチローのオールスターでの投手起用事件のように世論が二分されるようなテーマにはむしろ積極的にコミットしていきたい。これからもよろしくお願いします、である。

 さて、今更ではあるが1900年代最後のペナント予想である。まずセ・リーグであるが筆者が大方の予想とは違う、ヤクルトを本命視したのは(1)川崎・伊藤・石井一の強力三本柱の存在(2)野村遺産の大きさ、が理由である。先月も少し触れたが、このうちの(2)には少し説明が必要だろう。野村遺産は大別するとふたつあった、ひとつは勝つ為の戦術・戦略といった方法論を9年間の長きに渡ってチームにたたき込んだその事であり、それが少なくとも今年位は残っているのではないだろうか、と。グラウンド上での監督の分身である捕手の古田が健在で、若松新監督を中心にした首脳陣のほとんどが残留となればなおさらである。もうひとつは、若い力が育ってきている事だ。「ワシのことは気にしないで、素質のある高校生を獲ってくれ」(蒼馬社・「ドラフト王国」の”ドラフト通信簿”)よりという事で指名し、その若い力でイースタンV、更にウエスタンの覇者阪神とのジュニア日本シリーズも制するなど、着実に成果が上がってきている。イースタンながら.331/18ホーマー/25盗塁の20歳・岩村やイースタンの優勝を決める試合で6回参考ながら完全試合を演じて注目を集めた同じく20歳の五十嵐などが筆頭だが(どこかの金満球団とそこの迷カントクが即戦力にこだわり、カネで有力選手の逆指名を買ってるのとはえらい違いである)、これらの若い力も遺産と優勝経験豊富なメンバー及びスタッフが上手くかみ合えば充分本命に推せると思ったのだが…。まだ4月も終わったばかりなのに早くも過去形になってしまいそうなのは、どうもいずれの遺産も上手く運用できてないからである。現在までのところ、強い時のヤクルトが持っていたいやらしさやスキのなさ、チーム一丸となって相手を攻略していくという姿勢がまるで見られない。試合を見ていても面白く感じられないチームになってしまった。いい意味での緊張感まで前監督が持ち去ってしまったのか。去年頭角をあらわしかけた北川・副島・度会といったところもまるで活かされていない。きびしいシーズンになりそうである。

 プロ野球開幕連勝記録タイに並んだ中日が当然ながら優位に立ったことは間違いない。何といっても投手力が図抜けている。去年の最優秀防御率・野口に新人王・川上、パの最多勝・武田、更に山本昌、サムソンといった先発グループはスキがなく、5月からは2年連続して10勝している門倉も戻ってくるのだから強力である。左右のバランスもいい。中継ぎ・ストッパーもルーキーの岩瀬が使えるメドが立った事で、前田・正津・中山・落合→宣とほぼ万全。大きく連敗することは考えにくく、ダンゴ状態の他の5球団のなかからどこかが抜け出していかないと、ペナントレースの興味が早々に尽きかねない。対抗馬としては横浜・巨人といったところが挙げられるのだろうが、いずれもそれぞれ弱点があり、中日を止めるのは簡単ではなさそうだ。ディフェンディングチャンピオンの横浜は佐々木の調子にやや疑問符がつくし、投手力全体でも中日に比べるとやや落ちる。マシンガン打線はまずますだが、駒田に少しおとろえの気配があるのが気がかりでもある。阪神の変わりぶりは感動的ですらあるが、選手の総合能力のみを比較するならばリーグで間違いなく最下位。やはり今年はタネまきの年だろう。巨人は監督と四番が変われば間違いなく上昇するのだが。某出版社からプロ野球の大逆転試合を集めたビデオが発売され好評を博しているが、開幕から一ヵ月もたたないうちにこのビデオに収録されるべき試合を二試合もメイクドラマしてしまった首脳陣は切腹モノである。これ以外の試合も含めて巨人の低迷の原因は中継ぎ陣の不足・未整備が大きい、というのは誰の眼にも明らかだと思うが、球団自体が貧しくて絶対的に人材が不足しているチームならいざ知らず、カネ遣い放題の銭ゲバ球団にそういう問題があるからといって誰も同情してくれないだろう。

 パ・リーグでは近鉄を推した。ここ2〜3年、毎年優勝候補に推してきたが、今年は例年以上に戦力が抜きん出ているように思えた。だが、右のエースである今年から本格的に先発に転向した赤堀、左のエースで開幕から3連勝、防御率も0点台と素晴らしいスタートを見せた小池、去年それぞれ60・61試合に登板し防御率1.97・2.87と抜群の安定感を見せた右と左の中継ぎエース酒井と西川、更にパのナンバーワンストッパー大塚が全員故障するなんて誰が想像できただろうか。将棋で言えば飛車角金銀落ちといっても過言ではあるまい。強いてなぐさめを言うならまだペナント序盤で、しかも他のどのチームも決め手なく、ダンゴ状態がしばらくは続きそうであるというところか。上記の投手陣の回復さえ順調ならばまだまだ本命に推せる。特に、小池と赤堀だろう。大塚は秋までは無理そうだが、バルデスが代役としてよく頑張り、首脳陣の期待に応えている。対抗はやはり西武になるが、詳しくは次号で。ペナントレース的にはパのほうがはるかに面白そうである。                                 (この項続く)

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