<バックナンバー一覧>

1998年5月号
written by 来素果森

98年のペナントレースを予想する(2)


 先月の続き、ペナントレース予想の後編であるが4月5日現在、チームによってはすでに手痛い故障者が出ている。4年間で52勝、自他ともにチームのエースであると認めるグロスが戦線離脱した日ハムやイチローに次ぐ主軸で去年打率302、本塁打17本と活躍したドネルスを欠くオリックスも痛いが、何より影響が大きいのは文句なく古田を欠いたヤクルトだろう。さほど長期間に渡る戦線離脱にはならないようだが、開幕の対巨人三連戦三連敗した、という結果以上にである。この点を詳述するとそれだけワンテーマになってしまうので詳しくは書かないが、ヤクルトのV2がきわめて難しくなった事だけは確かである。

 同じく三連敗組でならまだしも阪神のほうが影響が少ない(もちろん大きなマイナスではあるが)。こちらは、去年とは180度違うコンセプトのチーム造りをして、それがなじみきれないがゆえの三連敗と見れるからだ。上手くいけばの話ではあるがチームの戦う姿勢が定まってくれば巻き返しも可能であると思う。横浜キラーの湯舟が開幕の直前に故障したのも不運だった。

 2年連続打点王、と勝負強いロペスが去り、投手陣にも不安をかかえる広島。しかし、あえて優勝候補をひとつに絞れ、と言われたら筆者はここを推す。ただしそれは消去法で、である。ヤクルトの歯車が戻らず横浜が”機”を活かせず巨人が例年通りの頭の悪い野球に終始したら、広島が135試合終わった時点で首位に残っているかもしれない…その位の弱い支持でしかないのだが。戦力をつぶさに眺めてみると、近代野球の要、捕手は西山・瀬戸とそろっているし、前田・江藤・金本・緒方・野村のオフェンスは脚も含めて球界有数。去年はそろいもそろって大コケした紀藤・加藤・山崎といったところもいくつかは勝ち星を上積み(去年は3人合わせて2勝)できるだろう、と言う事でそんなに恰好つかない事にはならないのではないか。横浜とは全く違った意味で優勝のチャンスである。”万年優勝候補”はもう返上したいところだろう。毎年くり返される夏場のガス欠を返上しないと話にならないが。

<パ・リーグ>

 評論家の間では西武の下馬評が圧倒的に高い。雑誌やTVなどで複数の評論家にペナント占いをさせると、全員が西武を1位に推す事も珍しくない。去年の日本シリーズでヤクルトにそれこそ赤子の手をひねるようにやられたチームがここまで高い評価を受けるか?という気もするがでは他のチームでどこが、というと難しいのも確かである。穴狙い的一発ならばやはり近鉄か。リーグを代表するストッパーである赤堀が出遅れても新・ドクターKの大塚が十分穴を埋めそうだし、やはりリーグを代表するセットアッパーである佐野が今季絶望でも入来・盛田・西川・柴田と左右の中継ぎグループは充実している。毎年期待されながらもうひとつ殻をやぶりきれない高村・酒井といった潜在能力的には12〜15勝できるピッチャーが花開けばきわめて面白いのだが、1年目は二軍でも全く通用しなかった岡本をいきなり二ケタ勝たせたり、小池を左のエースに仕立てた小林ピッチングコーチの腕の見せどころである。オフェンス面では西武にヒケをとらない。武藤・大村・水口で構成する一・二番は西武の松井・大友コンビにくらべるとやや弱いものの、ローズ・クラークの三・四番は西武を上廻る。やはり西武にくらべてはっきり落ちるのはキャッチャーだろう。的山・古久保・磯部あたりの併用策になるのだろうが、いずれも決め手はもうひとつ。この面で差を詰めるためには特に西武戦においては一〜三番の俊足トリオ(ローズは去年22盗塁を記録したように、足が速い)が足を見せて、肩がかなり衰えてきた伊東にプレッシャーをかけていくしかあるまい。それが出来れば面白くなりそうだ。

 前述したように大黒柱のグロスが故障した日ハムだが、災い転じて…の可能性がないわけではない。飛躍が期待されながら去年全く期待を裏切った今関・芝草や、やや尻すぼみの感のあった今井、さらに新人の清水、去年器の大きさは証明した矢野・金村といったところがマウンドで成長していけば一昨年のような旋風を巻き起こせる可能性はある。課題はここもキャッチャーで、オリックスからFA宣言した中嶋を西武と争って敗れたのは痛かった。小笠原・田口・荒井・山下らの併用になろうが、投手陣が若いだけにしっかりした柱になれるキャッチャーの育成が急務だろう。オフェンス面では、両外国人と落合が鍵をにぎる。特に落合は出処進退を含めて、である。

 例の脱税事件で四番打者の小久保を欠くも、ロペスを獲得して少なくともオフェンス面への影響は最小限にとどめたダイエー。このチームの課題は─セ・リーグの某球団と同じで─首脳陣の頭である事は誰の目にも明らかだろう。ピッチャー不足と言われて久しいが、いくら”野村再生工場”の工場長が優秀だからといって、2年で27勝するようなピッチャー(田畑)をタダ同然で放出するような事をしていれば不足するのはあたり前である。首脳陣及びスタッフはどこに眼をつけているのか。たとえば、150kmを超えるストレートをコーナーに投げる事の出来る投手が活躍するであろう事は素人にもわかる。プロの眼、というのはそういうところではない”見る人が見ればキラリと光る”ところを見つけ出せねばプロ失格ではないのか。コントロール、球のキレ、球種の豊富さ、クイックモーションの巧みさ(去年170イニング投げて、許した盗塁がわずか1というのは古田の強肩を考えても驚異的である)…といった点も含めた”投手として総合的能力”がダイエーの首脳陣には見えなかったのだろう。残念なことだ。そしてまた、著者の見るところ現在でもダイエーにはそういう「日が当らないだけで総合能力的にはローテーションクラス」の投手がいる。それが誰なのか、はダイエー首脳陣への宿題としよう。その投手を見つけられれば、ダイエーは優勝にむけて一歩大きく踏み出せるはずだ。去年も中盤までは三強の一角を占めていたように、力はある。あとはそれを動かす頭次第である。

 客観的情勢としてはきわめて苦しいオリックス。正直、チーム力としては上がり目はあまり無い。仰木の監督としての真価を問われる年になるであろう。イチローという突出した存在をタネに得意のマジックを見せる事が出来れば、球史に残る名監督と呼べる存在になれると思う。当面の優勝争いのライバルになりそうな西武・東尾や近鉄・佐々木とはまだまだ格が違う。どこかのチームを徹底的にたたいてカモにし貯金をつくり、ペナント争いに絡んでいく─そんな芸当が出来るのはパでは仰木ぐらいである。戦略的に戦わねばペナントに届かない事は百も承知のはずである。

 ロッテは、いかにも厳しい。厳しすぎる。フランコ効果といっても、即優勝争いに絡んでくるまでには至らないだろう。今年は地力をつける年か。

 ともあれ、ペナントレースは始まった。十二球団の健闘を願う。

▲バックナンバー一覧へ
▲トップページへ