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1997年5月号
written by 来素果森

一応ペナントの予想をしておく


 "FAとドラフトの問題”に対し手紙をくれた方々にはまことに申し訳ないが、今回は今年のペナントレースの展望を少ししておく。先月、日本のプロ野球界の至宝王貞治に泥をかけるような悪質なデッチあげ事件が起こったためにスケジュールの手順が狂ってしまった。許すまじ「新しい歴史教科書をつくる会」(会長・西尾幹二電気通信大教授)。お前はアースでもつないどれ。また、反論のごときものを送ってきた来素粉森おじさんへ。あなたにもし、ほんの少しの勇気があってこちら(編集部で結構です)へ連絡先を教えて下されば、あなたの間違いを教えて差し上げます。一部は正しい認識に達している部分もあるようなので、サービスサービス。FAとドラフトの問題は今度必ず。

 まず、昨年日本一になったチームのいる方から。ただし、あらかじめ断っておくがこれは順位予想ではなくあくまで「どこが優勝するか」を考えるのがテーマである。大ざっぱな目安以外の順位づけは行わないのでご了承を。

 <パ・リーグ>

 両者外国人打者を入れ替え、落合の加入した日ハムの下馬評が高く、評論家サイドの予想でも優勝候補のトップに挙げる人が多い。去年リーグナンバーワンの防御率を残した投手陣に加えての打線の充実が高い評価の理由だろう。わからなくはない。しかし、筆者には層の薄さがどうしても気になる。西崎とグロスを軸とした投手陣も、この二人をのぞくと実質的には去年一年しか実績のない投手が先発ローテーションに入る事になるし、去年ホールド王のタイトルを獲って今年はストッパーにまわる島崎には、ここ2年で蓄積された疲労の問題がどうしてもつきまとう。球のキレがこの投手の生命線なだけに、守護神的働きを期待するのはやや荷が重いのではないか。上田監督もここらへんは当然計算していて、去年のドラフトでは大学・社会人出の即戦力投手を5人(他に高校生投手1名・捕手2名)も指名した。この新戦力が生きてはじめて優勝争いに名乗りをあげられる…位の評価が妥当なのではないか。オープン戦でみた限りではドラフト2位の今井がかなり使えそうだし、夏以降には1位の矢野も出てくる可能性がある。そうなったら楽しみだが、本命とまでは推しにくい。対抗馬までだろう。V2を果たしたオリックスにも同じ事が言える。元々勢いで投げるタイプの鈴木平が去年並の働きが出来るかどうか。野村・渡辺といった中継ぎ陣もここ2年はほぼ全員が完璧だったが、誰か一人が調子を落とすと他の投手にかかる負担がてきめんに大きくなるだけに不安がないとはいえない。大リーグ入りした長谷川の穴もじわじわと効いてくると思う。高橋・小林といったところが完全に一本立ちしないと意外な落ち込みもあり得る。また、攻撃陣でもイチロー以外は万全の信頼が置けるわけでもなく、リーグ最低数の盗塁が示すように足を使った攻めが出来るわけでもない。三連覇はむずかしいのではないか。仰木の采配に大きくウエートがかかるのは間違いないが。

 評価がむずかしいのは西武。垣内の伸び悩みもあって、しっかりした打線の軸が出来ないのがつらいところ。大友・松井という素晴しい一・二番がいるだけにクリーンアップ、特に四番がカギを握る。去年の低迷の理由も結局は清原の不振が大きかったわけで、新外国人マルティネスが期待通りの働きをすれば前後を佐々木・鈴木(高木大)でかためたジグザグ打線が組め、攻撃面においては申し分のないラインアップが出来あがる。要するに、新外国人次第で天国から地獄までアリなのだ。そんなの予想でない、といわれると困るのだが、チームのつくられ方がそうなっているからとしか言い様がない。他のチームでももちろん外国人が働くかどうかは大きなウエートではあるのだが、死命を制するまでに大きいのは筆者のみる限り今年は西武と阪神である。逆に言えば、マルティネスがハズレだった場合は優勝はおぼつかないだろう。投手陣は多少おとろえの目立つ選手もいるものの復活の期待が持てる選手のほうが多い。よく言われる事だが、石井丈・杉山・小野・郭・渡辺久で去年は6勝19敗3セーブだった。それでも3位に入ったのである。投手陣の潜在能力は高い。打線の支えさえあれば十分働けるはずである。

 ダイエーとロッテは今年は台風の眼に徹するべきだろう。いずれも投手の頭数が足りない。優勝まで届きそうもない。逆に他チームは、この両チームのエース級(小宮山や工藤・武田)が出てきた時にいかにしのいでいくかがキーポイントである。この2チームからいくつ貯金がかせげるかが最終的には大きくモノを言うと思われる。去年、日ハムがオリックスに大きく負け越しながら(8勝16敗2分け)も優勝争い出来たのは、この2チーム相手に16の貯金ができたからである。優勝争いのセオリー、お得意さんをつくれは不変である。

 さて、というわけで以上5チームにいずれも決定的な強味がない。そこで、筆者としては今年のパ・リーグの優勝候補に近鉄をあげたいと思う。一般的な常識からすると大胆な予想かもしれないがこのチームの総合力は捨てたものではない。新外国人の二人、投手のミラッキと打者のクラークがともにかなり働きそうなのも大きい。投手陣にしても、中継ぎ・抑えにはリーグを代表する投手がいる上に先発も頭数はそろっている。また、能力は十分なのになぜか生かされていなかった西村・香田・江坂といった面々もピッチングコーチが変わった事によって生きかえる可能性がある。手綱捌きさえ間違えなければ(それが難しいのではあるが)なんとか行けそうである。また攻撃面でも、往年の”いてまえ”の迫力こそないもののひとクセあるバッターがそろっていて面白い。投打とも絶対的な柱がないのは弱いが、そこをついてくる監督が他チームにいないだけに押し切れるのではないか。それが、近鉄優勝説のひとつの根拠でもある。ただし、二年めになる佐々木監督が成長している事が前提ではある。

 <セ・リーグ>

 豊田泰光氏いわく、”今年はペナントの予想はしない事にします”というほど、総合力的には巨人が抜きんでている。あたり前である。カネで他チームの4番やエースを集めているのだから。よって、評論家諸氏も(広島や中日に勝ってほしいけど)巨人がペナントを制するのではないか、という予想が大勢をしめている。いまや死角は「長嶋監督である事だけ」(野村監督)ではないのか、というのが一般的な見方だろう。筆者も巨人が優勝候補である事は否定しない。優勝の可能性が一番高いであろう事は認める。しかし、それは世間で言われている理由とは微妙に違う。たとえばスタメンの攻撃力と守備力をくらべると、去年より今年のほうが確実に落ちている。落合の守備はいただけなかったが清原はさらに下手だし、打力も落ちる。元木より仁志のセカンドは下手だし、仁志よりルイスのサードは下手。さらにマックより松井のセンターは下手だし、広沢がまた外野に入るのならば…。個人的なレベルアップが見込まれる松井等の成長分をのぞくと、去年よりよくなっている部分は皆無にひとしいと思う。ONの再来のMK砲が巨人をひっぱる、なんておとぎ話をベースに巨人を優勝候補にしているわけではない。

 ではなぜ、は以降で。 (この項つづく)

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