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1996年10月号
written by 来素果森

救援投手についてその2完全編。横浜はなぜ沈んだか


 セ・パ両リーグともペナントレースはここに来て大変な盛り上がりを見せている。特にセ・リーグは一度脱落したかに見えた巨人が大きく盛り返し、一部では本命視されるまでになった。その意味では小生も不明を恥じなければならない(8月号当欄)が、多少の弁解を許してもらうなら、プロ野球界のためにこうあってはならない…という希望的観測によって状況分析がひきずられてしまった。ここらへんの事は次号またはその次でじっくり書くことにするが、その予想が外れた以外の8月号の内容は全く訂正する必要がないので念のため。別に”瀕死のチームを有能な監督が救った”わけではない事は誰も否定しないだろう。今月は、本来8月号でとりあげるはずだった救援投手について、のまとめをしておく事にする。救援投手、ひと口に言っても中継ぎ・ワンポイント・ストッパーから敗戦処理に至るまで様々だが、とりあえずストッパーに絞って話を進める事にしよう。

 9時30分の男・宮田が先鞭をつけ、江夏によって確立されたストッパーの座。近代野球には欠かせない存在となったそのポジションをこれまで勤め上げてきたピッチャーたちを見てみると、だいたい次のようなタイプに分けられる事ができる。

(1)ストレートがとにかく速い、速球命のタイプ。鈴木孝、小松(いずれも中日)、赤堀(近)、平井(オ)、角、石毛、西山(巨)、田村、古溝(神)、佐々岡(広)、河本(ロ)…と数的にも一番多く主流。田村がこのタイプに入るのに違和感を覚える人もいるかもしれないが、好調時の彼は右打者に対してもストレート一本で勝負できるほど速かった。津田(広)の急逝と石本(近)の使われすぎによる早すぎる引退はくれぐれも惜しまれる。

(2)落ちる球、フォーク・シンカーで勝負するタイプ。山本和(神),牛島(中→ロ)、遠藤、佐々木(洋)、金石(日)、マリオ(巨)、高津(ヤ)、潮崎(西)。最近メキメキと勢力を伸ばしているグループで、速球派をゆるがす勢い。大野(広)も先発にまわる以前はこのタイプだった。

(3)野球頭能にすぐれているタイプ。これは江夏(神→南→広→日→西)、鹿取(巨→西)につきる。数は少ないものの日本のプロ野球史上通算セーブポイント数1位と2位がここにいるのだから無視できない。たとえ球の威力が多少おとろえても、頭はおとろえない。結果、長く活躍できるというわかり易い構図である。

(4)落ちる球以外の変化球で勝負するタイプ。斎藤(洋)、中西(神)、森(西)。いずれもカーブ系で、シュート系では池内(神)ぐらいか。最近はほとんど見ない。

(5)中継ぎタイプの延長、というか比較的多彩な球種を持ち、コントロール・球威などもほどほど高いレベルで総合力で勝負するタイプ。井上(ダ→広)、吉井(近→ヤ)、佐野(近)、島崎(日)、池田(神→ダ→ヤ)など。チーム事情で配置転換される事も多い。

 といったところだろうか。もちろん、これは大ざっぱな分類でいくつかのタイプにまたがってあてはまる投手も多い。例えば(2)に入れた遠藤、佐々木はストレートにも十分な威力があって(1)の条件も満たしているし、牛島にしてもそのクレバーな投球ぶりは彼の野球頭脳を証明するにふさわしいピッチングであった事を否定するものはいないだろう。逆に言えば、一芸だけでは一流の称号を得るのはむずかしいとも言える。勢いのあるうちはいいのだが、速球だけ・フォークだけでは必ず行き詰まる。そこをどう克服していくかが一流になれるかどうかの分界嶺である。若い時に球の勢いを買われてストッパーをつとめた投手が、そのきびしい使われ方で勢いこそ失くしたものの様々な経験を積み先発に廻って活躍する…という事がよくあるように(鈴木・吉井ほか)頭脳を鍛える事によって名実ともに名投手への道を歩んでいく場合が多い。現在本調子とは言えないオリックスの平井も、ゆくゆくはこの道を進む事になるだろう。

 ピッチングのスタイルとは別に、投入されるタイミングも投手によってはむずかしい場合もある。具体的には、(A)イニングの頭、ランナー無しの場面から投げさせるほうがいいタイプと、(B)ピンチの場面、例えば8回裏ワンアウト満塁といった場面でもいけるタイプにわかれる。日本ではこの2つのタイプの違いはさほど取り上げられないが、大リーグでは(A)のタイプはクローサーと呼ばれかなりはっきり区別される。どちらかというと(1)と(2)に分類される投手は(A)、(3)(4)(5)は(B)のタイプが多い。球威は自信があってもさほどコントロールには自信のない投手が多い(1)やつねにワイルドピッチという不安要素のある(2)(ただし、サイドスロー組の高津・潮崎はさほどではないが)はピンチの場面では100%の能力を発揮しにくい。日ハムを支える守護神の金石が典型的なこのタイプで、ランナーを背負った場合のリリーフ成功率はきわめて低い。上田監督もその点はよくわかっていて、ピンチに投入するのは(5)のタイプの島崎で、金石は9回の頭からという場面が多い。さすがによくわかった采配と言えるだろう。ちなみに金石の去年の成績は32試合登板で35イニング2/3投げ、2勝3敗25セーブ。(3)のタイプの鹿取がここ5年間68〜85イニング投げているのに較べると同じストッパーといっても使われ方の違いがわかるというものである。それでこそ生きる金石の持ち味というべきか。記憶力のいい読者の方なら以前、筆者がこの欄でピンチに石毛・西山といた(1)のタイプ、球威はあるけど球の行き先は球に聞いてくれ、といった投手を投入する事を笑ったことを覚えている人も多いだろう。その時に詳しくはスペースの関係上書けなかったが、ようするにこういう事なのである。面白い数字がある。周知のように防御率というのは前の投手が残したランナーをホームインさせても影響されないのでリリーフ投手の実力はこれによっては計りにくい。そこで走者がいる場面での登板で、何人の走者のうち何人に得点されたか、を週刊ベースボール増刊夏季号「救援投手」特集号でレポートしているが、球界を代表するストッパーの佐々木が16走者のうちの2走者、(1)のタイプとはいえコントロールがよく85イニング投げて16与四球、の平井が31走者中6走者、潮崎が28走者中4走者、(5)のタイプの木村(ダ)が28走者中5走者なのにくらべ、石毛は22走者中なんと過半数の12走者をホームインさせている。とび抜けてピンチに弱い投手といってもいいだろう。もちろん、性格的な問題(プレッシャーに強いか弱いか)といったような事もあるだろうが、より本質的な問題はやはり投手のタイプの問題である。こういったところを見抜きながら選手を起用していくのが首脳陣の仕事だと思うのだが。

 多くの評論家が指摘している事でもあるが、大矢新監督率いる横浜があれだけいい出足だったにもかかわらず、急激に失速して阪神と最下位争いをしているのは、成田─佐々木ラインを崩した事が主因である。極端に言えば5回までリードを奪っておかないと安心できない、というゲームメイクをしなければならなかった他チームの監督はどんなに楽になった事か。当欄で筆者は”いずれ大矢は成田─佐々木ラインを構築するだろう。そこからが勝負”という意味の事を書いたが、どうやらその動きはなかった。横浜のように、銭ゲバで選手の補充は思いのままといったような手段を取れないチームが、自軍のチームの選手の能力を十分に引き出す事が出来ない争い方をするなら、最下位争いも当然だろう。まして、近代野球で極めて比重の重い救援投手においてなら尚更である。                            (終わり)

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