ロケットスタートを公言する愚かさだけではなく。その(2)
先月に引き続いて巨人のリリーフ投手陣について書くが、その前に前号で取りあげた木田について。彼が本来の能力を発揮したのは5/30の対ヤクルト戦である。中5日、と十分に間隔をあけて出てきたこの日は見事完封勝利をおさめた。ローテーションに入れてきっちりとつかえば、ふたケタ勝利が見込める投手である。今後の使われ方が注目される。というのは、今回先発にまわされたのは首脳陣が彼の適性を見抜いたからでは決してなく、河原の二軍落ちにともなう”便利屋の仕事のパターン”としての先発起用だからである。ここ数年の木田は、ずっとそういう使い方をされて持てる力を十分に発揮できずにきた。頭の悪い首脳陣の元で働かされる男の悲劇、といえばそれまでであるが、本人には気の毒としか言い様がない。幸運を祈るしかないだろう。
首脳陣の頭が悪かったことの不幸をはじき返す事が出来なかったのが小原沢だろう。近代野球において、ある意味では先発よりもはるかに高い能力が期待されるこの仕事を、キャンプで多少の成長を認められたからといってプロ入り後4シーズンでひとつしか勝星のない投手にまかせるほうがおかしい。一球たりとも気の抜けないプレッシャーや土壇場でのギリギリの駆け引きというのは、ブルペンやオープン戦や二軍戦では決して経験する事も体得する事も出来ないものだし、後述するようなそれらの無さを補ってあまりあるような能力の持ち主であるとも思えない。ほとんどいいところを見せる事なくファーム落ちしたが、まっとうな使われ方、敗戦処理からはじまって徐々に経験を積ませていくような起用法をしてやれば、また違った結果が出たかもしれない。せっかく埋もれていた素材に目をつけて発掘しても、育成法がなってなければなにもならない、といういい例であった。もちろん、素材自体に能力がなかった場合には論外であるが。その場合はそんな選手に目をつけた首脳陣により責任が重いわけである。
誰よりも一番期待を裏切ったのは西山である事は衆目の見る所一致する所だろう。去年の後半にそれこそスイ星のように登場し、20試合に登板して5勝1敗7セーブ、防御率0.53とほぼ完璧な成績を残した時にはこれで巨人のストッパー問題は解決したかと思われたものだが、今年は6月5日現在で13試合に登板し2勝2敗1セーブ、防御率9.53。大体どんなに調子が悪くとも終盤の1〜2イニングしか投げないストッパーの防御率は4点台まではいかないもので、去年9敗もした阪神の古溝でも防御率は3.29だった。同じく昨年絶不調で、それまで3年連続獲得していたセーブ王の座をオリックスの平井に譲った近鉄の赤堀(95年1勝8敗13セーブ)も3.29である。西山の数字の突出ぶりがわかるだろう。もっとも、数字など並べなくても出て来るたびに打たれている彼の姿を思い出せば、何よりも雄弁な不調の証明であるが。一度ファーム落ちし、再び昇格後初戦の5/18ヤクルト戦こそ抑えたが、その後はまたサッパリで、5/22の阪神戦では1点ビハインドの9回に出てきて4失点と試合をこわし、6/5の広島戦では0─4から2─4へと詰めよってさあ反撃、という6回の表、ワンアウト2・3塁のピンチに出て来て今期2割2分台と絶不調の正田こそ明らかなボールを振ってもらってなんとか仕留めたものの野村に2点タイムリーを許すなど散々。とにかく内容が悪すぎる。一番の決め球であるはずのストレートにしても、スピードガン表示に出るような初速の数字こそ148〜152キロといい数字だが、いわゆる棒球でキレや伸びがないために各球団からまんべんなくカモにされている。ここでわからないのは、首脳陣は何が西山が打たれる原因であるのかをどう認識していて、どんな対策を取ってマウンドに送り出しているかという事である。往年の江夏や最近で言えば赤堀のように、堂々たる実績のあるものなら不調の原因をセルフチェックする事も出来るだろう。しかし、実績としては去年の後半しかなく、まだ一人前の投手とはいえない西山が結果を出せない場合には首脳陣がフォローしなければならない。が、それが全く見えてこないのだ。
これはおそらく小生を含むほとんど全ての人が同じ印象を持っていると思うのだが、西山はいつも同じような場面で同じような投球をして同じように打たれて(又は自滅して)ファンの罵声を浴びてマウンドを降りている。キャッチャーによって多少リードの仕方は違ったりもするが、それはあくまでキャッチャーの個性によるもので(それがそろいもそろってたいしたものではない事はまた別の問題として)、ベンチから信念に基づく確固たる指示が出ているとはとうてい思えない。リードのみならず、フォームにしてもテクニックにしても然りである。いつ出て来ても、何も変化・進歩のあとも見られない。試合後の、無能で名高い某ピッチングコーチのコメントまで同じである。『ブルペンではよかったのにねぇ…』。断言してもよいが、このコーチ氏を含めた首脳陣の考えは”調子が悪いとは思えないので、何回も投げさせていれば一度は抑えられるだろう。そうすれば自信もついてまた去年のようにやってくれるに違いない”という素晴らしい、プロフェッショナルな思考であるに違いない。それが小学6年生のかとうつとむクン(12さい)の考え方と全く同じなのは偶然としても。
かとうつとむクンよりは少し野球に詳しい人々や小生は、次のすじみちで考える。(1)去年あれだけ活躍したのに今年はサッパリ、というのは球の力が落ちたからなのか、パターンを覚えられたからなのか、フォームのクセ等を見破られたからなのか(2)特定球団でなく、どのチームに対してもいい結果が出ないのはなぜなのか(3)問題に対してどう対処するべきか、である。もう何回かこのコラムで繰り返し書いている事であるが、いやしくもプロと名のつく野球の首脳陣がするべき事は、その選手が調子が悪かったり素材や才能を生かしきれていない時にどう教え導くか、という事が最低限期待される事である。西山が黙っていても去年と同じような成績を残しているのだったら何も問題はない。そうでないからこそ出番なのである。ところが、全くそれが見えてこない。指導が正しいかまちがっているか以前に、指導自体が感じられない。これはどうした事だろう。
なるほど、最初の数試合は”ストッパーとして指名した投手に対しての信頼”を優先させたという事で任せきるのもよいだろう。しかし、どこまでも果てしなくそれで押し通そうというのはおろかの極みである。勝利という共通の目標のために努力する他の選手にとっても、また何よりファンにとっても失礼だ。西山という投手自身にも、具体的な指示は何もなくせいぜい”球は走っている人だから自信を持って投げろ”位のアドバイスで送り出され、打たれる、の繰り返しが決していい結果(長期的に見ても)を与えるとは思えない。「この人たち(首脳陣)をアテにしてもロクな事がない」という真理を得るぐらいだろう。それはそれで重要な事ではあるが(笑)。
また誌面が尽きてしまった。こうした、首脳陣の果てしない無能ぶりを救うのが銭ゲバシステムである事は言うまでもあるまい。ただ、そうやってつぶされていく選手たちを見るのはつらく切ない事である。
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