96年のペナントを占う──セ・リーグ編──
いよいよまたプロ野球の季節がやってきた。去年のこのコーナーでは、金でペナントを買おうとする巨人とダイエーだけは優勝させるべきでない、と書いたが幸いにもその願いはかない、なおかつオリックスのパ・リーグ制覇予想までは的中させてまずますの出来だったのではないか、と自画自賛(笑)であるが、今年は少し予想の仕方を変えて各チームの順位というよりも優勝の可能性に重点を置いて考えてみようと思う。2位も6位も一緒、とまでは言わないまでも優勝チームと2位チームの差は2位と6位よりはるかに大きい差があると思われるので。
〔セ・リーグ〕
去年とは全く違った意味で、今年ヤクルトに優勝されたとしたら他の5チームはかなり恥ずかしい。石井・川崎・岡林と最低でも30勝、普通にいけば40勝近く計算できるエース格が見込みが立たないのだから、つけ込むスキがないとは言わせない。それでもなおかつ山部・ブロス・吉井らが軸になれる投手陣は強力。あの衝撃的なデビューを飾った伊藤を加えて、全ての投手が出揃ったらこのチームの天下はまずゆるがない。逆に言うと、他の5チームは今年がヤクルト黄金時代に待ったをかける最後のチャンスぐらいに考えたほうがいいだろう。先に挙げた主力7投手の平均年齢は26才強。最年長の吉井でも31才と若いだけに長く栄えそうだ。辻の獲得なんかも明らかに”先”を意識しての事だと思われる。繰り返しになるが、ここ4年で3回ペナントを制し、更に上昇の気配を見せるヤクルトを叩くのは今年を置いてない。セ・リーグのペナントは今年はこの観点から見るべきであろう。
定石で考えると去年の2・3位チーム、広島と巨人が打倒ヤクルトに近いところにいると思われる。去年は前田をはじめとして主力が次々と倒れてペナントから脱落した広島は、チェコと山内の出来が大きなウェイトを占めてくる。元々投手の頭数が足りないチームなだけに、この二人が去年並み以上の活躍をしないと苦しい。大野以外に頼れる左がいないのもつらいところ。鈴木・佐藤、移籍の加藤といったところから誰か出て来ないと優勝まではきびしいだろう。中継ぎ・ストッパーも含めて、少しトレードで駒をそろえるべきではないか。野手陣は文句なくセ・リーグナンバーワンの評価が出来るだけに、投手陣の整備が急務だ。
投の三本柱の一角、桑田を欠いてペナントにのぞむ巨人。たしかにそれは痛いが、ヤクルトよりははるかにダメージは少なく、むしろこの点は強調されすぎ。このチームの課題は相も変わらずベンチにある。ゴマスリ須藤を切ったのはよかったとしても、他チームの監督として失格の烙印を押された土井や高田が入閣しているのはなぜか。何年たってもまともな頭脳を持ったキャッチャーが育てられない山倉が残っているのはなぜか。監督が有能なチームの場合ならともかく、このチームには監督を支える事が出来る有能なコーチが必要のはずである。また今年も頭の悪い野球を見せられるのだろうか。戦力的には十分優勝出来るものは持っている。新外国人のマントもなかなか実戦的なタイプのようだし、仁志も使えそう。ただ、どういうオーダーを組んでくるのだろう。外野がやはり広沢・マック・松井なのだろうか。だとしたらまた誰も望まぬ味気ない、つまらない野球を見せられる事になりそうだ。槙原が32才、斉藤が31才とそろそろベテランの域に入ってくるだけに、今年あたり優勝しておかないと先々苦しくなってきそうである。
大矢新監督をむかえた横浜。内野陣を大きく入れ替えたり、盛田を先発に持って来たりと12球団で一番長くペナントから離れているチームの体質改善に必死である。これがどうでるか。相手がいやがる戦法を取れ、という定石から言えば、盛田の先発転向はセオリーに反している。大矢もその事は十分承知でのバクチだろう。いま一つ伸び悩んでいる若手投手陣へのいい刺激になって、当たれば若いチームだけにあっと驚く展開もありそうだ。なにしろ、去年は優勝したヤクルトにもっとも善戦(12勝14敗)したチームなのだから。唯一阪神に負け越したチームでもあるのだけれど。
活発なトレードと宣の加入で、去年とは大幅にチーム構成が変わった中日。もともと力のあるチームなだけに村田・前田といった移籍組が本来の力を出せば一気に優勝戦線にからめる。金村・大豊といった去年期待を裏切った選手たちも今年は目の色が違うだろう。一番の問題は宣につなぐ中継ぎ陣。出戻りの平沼・川畑、鹿島・中山・キク・野中ら候補は多いものの安定してまかせられる人材がいない。去年の前半、ヤクルトが快調に突っ走った時に伊東が、そしてそのあとは宮本・山田・加藤らがいた事を忘れてはならない。オリックスの野村・渡辺・清原・鈴木平の中継陣も同じくである。優秀なセットアップがいてはじめてストッパーが生きる。星野はここに誰をあててくるか。正直、外から見ると適任者がみつからないので興味津々である。中山の力が全盛期に近いところまで戻ってくれば使えるのだが。
阪神の優勝はかなりきびしいだろう。ただし、野球の質を変えれば台風の目にはなれる。去年のあの低迷は。一にも二にもやるべき野球を間違えたからだ。一点をなんとしても取り、一点を何がなんでも防ぐ徹底的な守りの野球をすれば、最下位候補から脱出してAクラスが見えてくる。亀山や八木の早々のリタイヤはいかにも痛いが、新庄を中心に守備力優先の外野の布陣を敷き、内野も打撃には多少目をつぶっても守備範囲の広い久慈を中心に組み立てる。投手陣は案外若手を中心に整備されていて、中込・山崎・葛西など復活が期待できる投手も多いのであまり心配ない。一番の弱点の捕手もヤクルトから移籍の柴田チーフ兼バッテリーコーチがバックにつく事によって少しは見られるようになるだろう。こうして守りの野球が型になってくれば、他のチームから見てもいかにも”イヤな相手”になってくる。去年のように完全に見下されて戦うことはなくなる。全てはそこからである。
去年のペナントレースはある意味では異常だった。投手陣が総崩れになった中日と、戦い方を忘れた阪神がそれこそ記録的な大敗をし、チームごとの勝ち数と負け数の差が極端に開いた。今年はもう少ししまりのあるペナントレースが予想される。そうするとやはりカギを握るのは阪神だろう。このチームが去年のような戦い方をすると、試合運びに抜群の上手さを見せるヤクルトの貯金箱に二年続けてなりかねず、ヤクルト有利だが前述のようなわきまえた戦い方をするとどのチームも去年のように阪神戦で貯金をかせぐわけにはいかずに優勝ラインが下がり、最終的にはこのチームに痛い星を落としたチームが脱落していくような展開になりそうだ。この場合にはスタートダッシュに成功した場合の、という条件がつくものの横浜が面白い。ペナントが押し詰まった段階まで好位置をキープし、土壇場で取れる試合は確実に取るダブルストッパーシステムに戻したら、他チームにとってはかなり脅威だろう。大矢の操縦振りが楽しみである。
ともあれ、去年よりも緊迫したペナント争いを期待したいものである。(この項終わり)
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