ヤクルト対オリックスについて、と監督論。
今月は少し予定を変更して、今シーズンの回顧と21日からはじまる日本シリーズの展望を取りあげてみたいと思う。マスコミ論は次号以降で。
さて、先に優勝を決めたオリックスだが、これほどまでにぶっちぎりで優勝出来た原因はダイエーの王監督がいみじくももらしたように”西武のせい”。対戦成績がオリックスの21勝5敗、16の勝ち越しというのは最終的なオリックスの貯金が35だったのでほぼ半数である。仮にこの両チームの対戦成績が互角だったら西武が優勝していた。当コーナーのペナント予想時にも書いたことだが、前西武監督・森に対してどうしても引け目を感じていた仰木。西武の監督交替がなかったらこれほどまでに一方的に勝ち越すことは出来なかったろう。ペナントレースの展開もだいぶ違ったものになったと思われる。今までのコンプレックスの裏返し、とでもいうか、特にシーズン中盤以降のオリックスの対西武戦の戦いぶりは圧倒的だった。東尾がどうチームを立て直してくるかが来シーズンに向けて楽しみである。
一方のヤクルトは下位チームからは確実に星を稼ぎ、優勝争いのライバルである広島・巨人の首根っこもしっかりおさえてこちらも危なげなくゴールインした。数字的なものでみると例えば広島と比較して、チーム防御率はほぼ同じ、打率・本塁打数・盗塁数・得失点差などは全て広島のほうがかなり上まわっている。それでもこの大差で優勝という事はチーム自体の力もさる事ながら野村監督の力量によるところが大きかったといわざるを得まい。せり合う局面や投手戦での一点を争う場面で、いかに失点を防ぎ得点をするかという采配能力はバツグンである。対戦相手はあと一点が取れず敗れて行った。特に節目節目の試合には圧倒的な強さを見せ、オールスター前、上昇気流に乗りかかった横浜をたたき(7/21〜7/23神宮・三タテ)オールスター明けに最後の挑戦権獲得に挑んできた巨人に引導を渡し(7/29〜7/31神宮・二勝一敗)天王山と言われた広島戦を制した(8/22〜8/24広島・二勝一敗)。去年までの西武の戦い方を見るような、強いチームの戦い方である。連敗も最高が三連敗、と大崩がなく、去年の巨人のような相対的にたくさん勝った結果による優勝ではない、立派な優勝と言えるだろう。
そしてこの両チームがいよいよ日本シリーズで激突するわけであるが、どっちの監督もお互い名監督と呼ばれるにふさわしい眼力・指導力・方法論を持っている名将同士。大金やFAに頼るわけでなく、自ら見つけ、育て、チームを造りあげたところも共通している。イチローや平井、飯田やブロスを挙げれば明らかだろう。その「教科書」にのっていなかったバッティングフォームのゆえ前監督には使ってもらえなかったイチロー。大リーグで一勝も出来ずに、スカウティングレポートには”球が速いだけで守備・コントロール・変化球いずれもダメ”と書かれていたブロス。こういった選手の秘めたる能力を見つけ出す事が出来る監督にめぐりあえた選手は幸福である。逆に言うとめぐりあえないと悲惨である。今、イチローの才能・能力を疑うものは誰もいないと思うが、これだけ傑出した才能ですら仰木の前にオリックスの監督をやっていたヒトにはわからなかったのだ。この、二言めには”巨人ではこうだった”と言う能書きをたれるしか能のなかったD氏が現在も監督の座にとどまっていたら、決して大ゲサでなく日本のプロ野球の運命は変わっていた。背筋が寒くなるような話である。監督の能力が無いという事は決してそのチームだけの問題ではない。プロ野球界全体の浮沈にかかわる事なのである。だから監督というのは無能である事は許されない。不幸にしてそのような人間がその座に着いているとしたら、責任を持って糾弾し、それを取りのぞこうとするのがマスコミの責任ではないのか。社会の木鐸たれ、などと大上段に構えたくはないが、人気チーム・人気監督だからと言って書いている本人も思ってもいないような美文を書きつらねるのは、見苦しいを通り越して醜悪である。それによってプロ野球が衰退したら、どう責任を取るのか。
話が脱線した。さて、名将同士といえどチーム造りの方法論と結果は180度違う。もちろん、チーム事情が違うからでもあるのだが、イチローと言うスーパースターの一番打者以外は相手にあわせて日替り打線だったオリックス。オマリー・古田という主砲を生かすために三番にまで”つなぎ役”の打者を入れたヤクルト。六〜八番もふたつめのクリーンナップとするダブルクリーンンナップシステムをとり、あくまで型にこだわった。投手陣でも平井を中心にどちらかというと中継ぎ・ストッパーに比重がかかるオリックスと、先発陣が比較的安定しているヤクルト。対照的なチームと言ってもいいかも知れない。勝敗のポイントはかなり監督の采配にかかってくるだろう。特に仰木の組む猫の目打線は先発が予告先発のパリーグだからこそ有効な手段で、相手投手が先発メンバー表を交換するまでわからない日本シリーズでは十全に機能を発揮できないおそれがある。この点をどう克服するか。野村はおそらく、イチローにはある程度打たれる事は覚悟して前後の打者を殺す事に全力をかけてくるだろう。イチロー以外には特に頼れる打者がいないだけにどう対応するか。相手投手が確定できないだけに、苦労しそうである。
反対に野村はリードされた展開になった時にどう対応するか。ヤクルトが一番苦戦した相手が盛田--佐々木というしっかりした中継ぎ・ストッパーを持つ横浜であった事からもわかるように、作戦・戦略的なものでは対応しきれない、本質的に能力を持った相手と戦う場合にはヤクルトも苦労する。佐々木と平井の比較だけなら五分としても、鈴木平・野村といった中継ぎ陣を持つオリックスの投手陣は横浜よりやや上。これをどう打ち崩していくかがポイントだろう。
皮肉と言えば皮肉だし面白いと言えば面白いのだが、両監督・両チームにとって一番苦手なタイプが出て来たのが今回の日本シリーズと言えそうだ。オリックスが唯一負け越したのはロッテだが、ロッテの先発投手陣からは伊良部・小宮山・ヒルマンと三人が投手ベスト10入りしている。先発陣力上位の投手陣構成は、ブロス・石井・吉井を擁するヤクルトに近いと言えるだろう。さきほどの横浜とオリックスの関係にも似て興味深い。また、野村の采配は仰木にとっては森を思い出してイヤだろう。反対に野村にとっても、イチロー以外は誰が出てくるかもつかみにくいオリックスの打線や、調子の波がはげしいかわりにいい時にあたるとひたすらお手上げになってしまう野田などがいる投手陣はやはりやりにくいと思う。以上の事をふまえた上でシリーズの帰趨を占ってみると、4-0か4-1、4-3でヤクルト、4-2ならオリックス、一歩ヤクルト有利というところではないだろうか。仰木が自分のペースに巻き込めればオリックスの目もあるが、どうも前述もした”仰木魔術は予告先発なればこそ”という気がするのでがっぷり四つの地力勝負になり、一歩勝るヤクルトに軍配が挙がるのではと予想する。両チームの健闘を祈る。
(この項終わり)
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