95年ペナントレース大予想。果たして…。
先月はウインターリーグの取材疲れか一週間ほど寝込んでしまい、ここの原稿やら講演会やら様々なスケジュールをキャンセルせざるを得ないハメになり、各方面に御迷惑をおかけしました。この場を借りてお詫びいたします。それと本来は今回「日本のプロ野球が自己破産を申請する日(2)」を書くべきところですが、恒例のペナント予想をしなければならないため、それは次回以降に徐々に語っていく事にします。ご了承ください。
さて、今年のペナントレースは例年とは違うきわめて大きな意味を持っている。日本のプロ野球がこれから発展していくか衰退していくかの境目、と言ってもよい。結論から書くと巨人とダイエーには優勝させてはならない。理由は言うまでもなく金で全てが決まるFAとドラフト、これによって優勝が決まるような──ペナントを金で買うような醜い手法が無効である事を証明しなければならないからである。以前からこの欄で主張し続けてきた事であるが、最近やっとこの制度の異常さに気が付いた人が増えてきて、改革を求める声が高くなってきている。次回この問題は再び取り上げるが、今回はあくまでペナント予想。”こうなって欲しい”と”こうなるだろう”の違いは当然はっきり区別して考えてみようと思う。
〔セ・リーグ〕
マック・ハウエル・広沢・川口・阿波野(香田とトレード)が加わった巨人の下馬評が圧倒的に高い。たしかに一見充実した戦力のように見える。だが、死角はないのだろうか。実は個々の選手を見ていくとさほど楽観は出来ない事に気が付く。ハウエルと川口はこの3年間でかなり数字を落として来ている(ハウエルの打率.331→.295→.251/本塁打38→28→20、川口の防御率3.34→3.54→4.72)いわば下がり目の選手だし、阿波野は去年は一軍で0勝2敗/防御率12.19、二軍でも1勝4敗/防御率4.71とここ数年のスランプから回復どころかよけいに深みにハマっている選手。再生工場、とまで呼ばれる野村監督のように選手の長所をうまく引き出す事が出来る能力が長嶋監督にあるとはとうてい思えず、頼りは”移籍一年目の選手は働く”というジンクスのみ。マックにしても、なるほど大リーグでの実績は今年の新外国人選手の中ではダイエーに入ったミッチェルに次ぐ大物であるが、ここ数年巨人に入った新外国人選手で”大物””今年こそ本物”といった前評判を得なかった選手がいただろうか。実際にペナントに入ってみないと何ともいえない。新入団組で確実に計算出来るのは広沢ひとりと言ってもよいだろう。一方在籍組では落合の衰えが問題。去年すでに得点圏打率がセ・リーグ規定打席到達打者中下から二番目になってしまったように、ピッチャーがピンチを背負って真剣に投げてくる場面では打てなくなってきている。長打力もなくなってきた。今年はホームランも2ケタに乗るかどうかだろう。巨人が圧倒的に優位に立つとしたら、それはあくまで移籍組が野球界の常識をくつがえすような、”驚異的な活躍”をした時である。もちろん、投手陣がしっかりしているのでそれがなければイコール最下位、といった事はないと思うが。
追いかける一番手はやはり中日か。右投手とストッパーの問題が解決していないが、金村とホールが加わった打線は特にせまいナゴヤ球場を本拠地とするチームだけに強力。ここ2年ほどやや低調な立浪が調子をもどし、リードオフマンの役目を果たせればハウエル─大豊─ホールで組むクリーンアップはセ・リーグナンバーワンの破壊力があるので、間違いなく得点力はアップする。落合・上原・小島・佐藤・鶴田といったやや伸び悩んでいる若手・中堅がひと皮むける土壌はあるのだが。
ノーマークに近い評価しか得ていないヤクルト。古田の故障はたしかに痛いが、山部・石井という若い左が順調に育ってきている。野村がやる気を失わずに指揮をとれば台風の目以上の成績が見込まれる。池山が打線の大黒柱に成長できるかどうかが大きな鍵。西村--吉井のトレードが吉と出るか凶と出るか。
新外国人二人がいずれもオープン戦好調で、ひょっとしたら、の期待を持たれる阪神。問題は捕手陣だろう。重宝な打撃技術を持つ関川がやや重用されているが、リード・肩ともにほんのわずかながら上の山田がベストではないか。若い、未完成の投手が多いだけに捕手がきわめて重いウエートを占める。湯舟・山崎・藪とそれなりに計算が立つ先発組に、古溝・田村・郭李といったそこそこ実績あるリリーフ組。量的には実は阪神投手陣はかなり揃っているので、ベンチの采配で上手くまわしていけば創立六十周年を飾る事も決して不可能ではない。仲田・葛西・猪俣といった能力はあるが不安定な投手をどう生かしていくか。
打線はどこよりも充実しているが投手の絶対数が足りない広島は苦しい。むしろ隔年投手の野村と去年はケガで途中リタイヤした佐々木の活躍が見込まれる横浜のほうが面白そう。去年は最下位とはいえ優勝した巨人には勝ち越しており、特にペナント山場の8月以降は9勝1敗と圧倒した。若いチームなだけに、ひとつ調子に乗ると突っ走る可能性もあるだろう。
〔パ・リーグ〕
去年の4強は横一線といってもいいだろう。野茂が抜けた近鉄は香田・西村・松谷といったトレード組次第。潜在能力は去年の球史に残る快進撃を思い出せばわかるように、ずば抜けたものがある。鈴木監督の能力がやたら取り沙汰されるが、誰がやってもむずかしいチームではある。工藤・石毛、そして森監督が抜けた西武。デストラーデに往年の力があるのか、去年全く働かなかった村田の復活は。東尾監督の力量は。かなり未知数の部分が大きい。西武からのFA組に加えて、今年来日した新外国人選手の中ではズバ抜けた実績を持つミッチェルが加入したダイエーは、王の監督としての成長度がどうなったかが一番の問題。前回の巨人の監督の時から成長していないとしたら優勝はおぼつかない。グラウンドの外から野球を勉強し直した成果はあらわれてくるだろうか。
あえて横一線の4チームの中から本命を選ぶならば、仰木ひきいるオリックスだろう。理由は西武の森監督が辞めたため(笑)。仰木の森コンプレックスはかなり重症で、去年も対西武天王山の四連戦四連敗を含め八勝十七敗と大きく負け越し。指揮官同士の相性というのは戦いに大きくひびくもので、仰木は近鉄時代も勝負どころでどうも西武に分が悪かった。森辞任が発表された日の仰木家の乾杯のグラスの音は、町内中の赤ん坊の夜泣きを誘発したという。それはともかく、長谷川・野田・星野としっかりした柱がいて、二年目のジンクスなどどこ吹く風のイチローをはじめとした強力打線があるのだから、順当に行けば優勝してもおかしくない。頭ひとつ、まではいかないがわずかにリードと見る。広岡ゼネラルマネージャーが就任したロッテ。一年目から優勝を狙いにいく事はむしろないだろう。長期的展望でチーム造りをしてくる事は間違いない。日ハムも同じ。今年は土台づくりだろう。
両リーグともに混戦が予想される。各チームの健闘を祈る。
(この項終り)
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