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| 早くも長嶋巨人を総括する。その(1) 。
8月12日、対ヤクルト3連戦の最後の試合を落とした事により巨人の優勝は絶望的になった。”ここ一番に弱いチームの体質”と”ベンチ(首脳陣)の能力の問題”の二点が出ざるを得ないような試合展開になったのは運が悪かったが、それで済まされる問題ではなく、この点を解消できない限りはいつまでたっても強いチームづくりなど夢のまた夢。そこで今月は9月号で予告した通り、首脳陣と捕手の問題を少し詳しく書いてみる事にしよう。野村監督が言うところの「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは正に名言で、長嶋巨人がちっとも浮上できないのは決して運が悪いからではなく、負けるべくして負けているのである。具体例を挙げながら説明して行こう。 前半戦の山場、7月最初の対ヤクルト3連戦で斎藤と伊藤が投げあい、ハウエルの劇的なサヨナラホームランが出た試合。覚えている人も多いと思うが、斎藤ー橋本とつないだ巨人とヤクルトの伊藤は一歩もゆずらず両者無得点のまま9回裏2アウトでハウエルが打席にたった。誰が考えても一発を狙ってくる、とわかる場面である。キャッチャーは村田。7月号のこのコラムで書いた事を少し抜き出してみよう。 …村田は少なくともリードの面ではかなり成長が見られる。(中略)状況に応じた、まではまだ行っていないがある程度理にかなったリードで、投手を保たせる事が出来るようになってきた。… 状況に応じた云々に注目してもらいたい。もちろん素人だって知ってる”外国人の一球めは気をつけろ”といったようなレベルの事を言っているのではない。自軍の投手の調子や実力を把握した上で相手の打者の実力・狙い球を絞ってくるタイプかそうでないか、また絞ってくるとしたら何か・どういう結果を求めにくるか( 四球狙いなのかヒット狙いなのか長打狙いなのか)を読み、それでリードをするのがプロの”状況に応じたリード”である。筆者はこの対戦をTVで視ていたのだが、村田がどういうリードをするか、その一点を注目して視ていた。7月号(原稿執筆は5月末)の時点から村田がどの位進歩したか…巨人が今後上位に浮上できるかどうかの大きなカギである。ところが、村田のリードは最悪だった。ハウエルは前半戦のこの段階ですでに年間サヨナラホームランのタイ記録、3本のサヨナラホーマーを放っている打者である。ホームランとは狙って打てるものじゃないとよく言われるが、逆にここはホームランしかないぞ、という時には狙わなければ打てるわけがない。球種とコーナーを絞り、それ以外の球がきたらあきらめる位の考えでバッターボックスに入るのが強打者の一般的な行動である。そうすると問題はいかに精度の高い読みが出来るかだが、当然ハウエルはそれが出来る。おそらく彼は”ハシモトのボールで一番有効なのはフォークボールで、どこかで必ず使ってくるはず。それを叩こう”と考えていたに違いない。そこに初球からおあつらえむきのフォーク。TVを視てた人はわかると思うがコース・高さとも決して悪くなかった。しかしそれを待ってたハウエルが見逃すワケはない。弾丸ライナーがライトスタンドにつきささったのはみなさん御存知の通り。これは決して不運のたぐいではない。 それではここで何を投げさせるべきだったか。普通のプロのキャッチャーだったら様子をさぐるために外角のかなり外れたボールから入り、歩かせてもいいという前提でまずまともには勝負してこないだろう。後続の打者との釣り合いや2アウトである事を考えると尚更である。橋本の調子自体はよかったので楽に乗りきれたと思われる。しかしもしリードしてるのが野村クラスだったら…。大胆な予想だがこんなリードになったかもしれない。 真ん中まっすぐ。時々ノムさんはそんな球を投げさせた。この球を要求できるキャッチャーは他にいない。少なくとも僕は知らない。 これは今や国会議員の江本がかなり昔に書いた「おれ、紆余曲球」という本からの抜粋である。後に阪神に移った江本は、山本浩二(現広島監督)のように鋭く読んでくる打者に使って効果を挙げたという。内角や外角のきわどいコースに山を張って待ちかまえている時にハーフスピードの真ん中まっすぐが来ると肩に力が入ってまず打てないそうだ。 話がそれた。ここで村田がフォークを、しかもストライクからボールになるフォークを投げさせた理由がまるでわからない。冒頭で書いた、外国人のファーストストライク、特に直球は気をつけろ以上の頭がなかった人だとしたら私は7月号で書いた事を自己批判しなければならない。ただ、こういう勝負どころでは往々にしてベンチから直接サインが出ているもので、だとしたらそれはベンチの責任だが。 ひとつ考えられるのは、橋本の力量を見誤ってるんではないか、という事。決め球はフォークだが、それは野茂のフォークとは違って打者に狙われてても打たれない、というタマではない。ストレート・カーブ・シュート・フォークいずれも水準以上だが、絶対というタマはない。だからカーブを勝負球にしようと思ったら、内角でバッターを起こし、フォークで空振りさせようとしたら高目をファウルさせて追い込む、という工夫が必要になる。8月のドームでの中日戦で中継ぎに出てきた橋本は立浪に3ランを打たれたが、投げる球を全てカットされて苦しまぎれに投げたフォークをとらえられたもの。この球もコースや落ち方は完璧だった。それでも打たれる、という事に早く捕手陣やベンチが気が付かないと、何よりも橋本の為にもよくない。自分がベストと信じたボールがスタンドへ持ってかれるのだからショックが大きいはずである。来年からは先発に転向するそうだが、その前につぶれては元も子もない。適切なリードと指導がなければ育つものも育たない。しかし、自軍の投手を完全に把握できない捕手や首脳陣にそれが出来るはずはなく、斎藤や槇原のように力で勝負するタイプはそれでもいいが、桑田がここ数年思ったような成績があがらず活躍できない理由の本質的な部分はここにある。投手としての成熟期によい指導者がいない、野村風に言えば”種をまき、水をやる”人間がいない。ここに桑田の悲劇がある。山倉とか堀内といったあたりを早めに差し替えないかぎり悲劇は繰り返されるだろう。(この項つづく)。 |