<バックナンバー一覧>

2001年12月号
written by 相田智久

12月号って言われてもなぁ(笑)ま、構わず夏祭りのお話です。
 今回は、夏のハロープロジェクト関連について見てみよう。モー娘を始めとして。新曲が出る度に元ネタ探しが騒がしい、つんくプロデュース作品。まずシェキドルの『全体的に大好きです』は、73年、ベイ・シティ・(ローラーズ)のヒット曲、『Saturday Night』が元になっている。特に歌い出し部分は、伴奏も含めそのままに近い。他人事ながら、著作権関係は大丈夫かと思ってしまった。

 元曲は世界的なヒットであり、つんくと同世代、30代の方なら、一度は聴いた事があるだろうポピュラーさだ。当時ジャニーズ系のグループが日本語カバーもしていた。キリン麦酒の「カンパイ、ラガー…」のCMソング元ネタもこれである。シェキドルに関しては、むしろ素直にカバーした方が良かったのではないだろうか。ま、手続きが面倒とか、無駄なお金遣いたくないとか色々あるんでしょうが(笑)。

 シャッフルユニットでは、三人祭の『チュッ!夏パーティ』に注目。こちらはオールデイズの『VACATION』が下敷きとの説がある。日本では60年代、弘田三枝子のカバー・バージョンがメジャーである。懐かしのポップス番組で流れるし、NHK教育の幼児向け英語番組で歌われたり、現在でも触れる機会の多いスタンダードナンバーだ。

 言われてみれば、確かに冒頭は『VACA…』の歌詞でスンナリ歌えたりする。曲のテンポもかなり似ている。こちらは前記のシェキドルの曲に比べれば、上手くカムフラージュして、趣を変えた仕上がりだ。

 さて現在のハロプロは、お気づきの通り、おニャン子方式の戦略を採っている。まず母体の大集団を確保。その中で組合せにより、新しいグループを次々に作る。また定期的なメンバーチェンジで新陳代謝を図る。資本の流出を防ぐ為、作業をなるべく内輪(自社関連企業)に発注し、利権を集中させる。所詮やらずぶったくりだが、80年代、流通の世界で「西武方式」と呼ばれていた商売のやり方でもある。

 勿論、この方法も万能ではない。ファンに投網をかけて、根こそぎ持って行く売り方。この不況下で、何時までファンがプロジェクト全体を買い支えられるのか。さらに新鮮さの問題。ユニットの組み換えで新味を出すと言っても、その形式自体にやがて飽きが来る。(特に大人層。だからこそミニモニ等で、若年層、本当の幼児層の取り込みに努めている訳だ)。マンネリ化の問題は大きい。98年、モーニング娘。がデビューしてから四年。既におニャン子の活動期間を超えている。

 ハロプロの牽引車、モー娘。の曲。ずっとお祭り騒ぎのアッパーな曲調が続いているのも気になる。メンバーの度重なる脱退で、コーラスグループとしての編成が崩れてしまった。しっかりした低音域の不足は深刻だ。(音域だけ合っていても、求める声質と違えば、効果が薄い)。これらの弱点を補う方法として、騒げる曲でノリの良さを持って押し切ってしまう、というモノがある。しかしそれは何年も続けられるだろうか。この傾向があまり長期化すると、ファンも疲労して来る。

 外野席としては、正念場を迎えた今後のお手並み拝見、といった所だ。大化けしてブランド化、女性アイドルならハロプロと、アップフロントの長期独裁政権が続く可能性もゼロではない。引き続き注意が必要だ。

 個人的にはハロプロの女性アイドル歌手独占状態は、この辺でいいのではと感じている。政治・経済、どんなジャンルでも、一党独裁が続けば停滞が起こる。中小プロダクションがアイディアを出し、色々な系統のタレントが出揃ってこそ、状況は面白い。もし単一のプロダクションに所属しているタレント以外、TVに出られない、なんて事態が起これば、やがてジャンルそのものの衰退を招く。もしその状態で存続出来たとしても、例えば宝塚のように、支持者以外の層がほとんど興味を示さない、一見さんの理解が難しい世界として、特殊化・孤立化してしまう恐れがある。実は男性アイドルにおいては、その領域に既に踏み出してしまったのではないか。地上波TVに顔を出すので「理解出来ている」と我々が誤解しているだけで。

 女性アイドルの世界はそこまで専門化せずに、お気楽・お手軽な娯楽であり続けて欲しいと思う。

 三人祭の曲『チュッ…』だが、例によってフレーズごとに装飾要素がてんこ盛り。振り付けも複雑なアクションが用意され、目まぐるしい。このギッシリつめ込まれた感覚を、「おトク! 楽しい」とするか「クドい! ゲップが出る」と感じるかで評価は変わって来るだろう。メロディは明るさが有り、キャッチー。親しみ易いものだ。ギミックが多い為、真直ぐなアイドルポップというより、それをパロディ化した作品との感が有る。そこには同じフリル好きでも、ピンハ派閥とゴスロリ派閥ぐらいの心根の違いがあると思うのだが、選択肢が少ない以上、アイドルファンなら楽しんでしまった方が得だろう。

 録音は典型的なポップス系の音だ。かなり人工的にコントロールしたとの印象。ボーカルはスピーカー間に平面的に並ぶタイプ声の帯域、上下を大胆にカット。どんな小型のシステムでも破綻なく再生できるが、人肌のぬくもり、生々しい息遣いを表現する方向の音では決してない。グループコンセプトが「お人形」だから、これはこれで良いのかも知れない。

 60年代ピンナップガール風のビジュアルとキッチュな曲の取り合わせ。インパクトは強かった。

▲バックナンバー一覧へ
▲トップページへ