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1995年9月号
written by 相田智久

ホテル街を背伸びしたドレスで駆ける奥菜恵! 子供走りだぞ 


日テレ系ドラマ『禁じられた遊び』は、『高校教師』以来のスキャンダル路線を継ぐ内容であった。不倫、浮気、未成年売春にバイオレンス…とまあ一通りメニューが揃えてある。が、ストーリーは案外古め。家族解体の危機がキーであり、スキャンダラスなイベントをつめ込みすぎ、ややノリにくい嫌いがあった。注目は常盤貴子と奥菜恵の出演。常盤はエキセントリックな役が続いていたが、本作では不倫をするものの、概ねフツーっぽい。ニッポン放送『常盤貴子・ムーンライト・パニック』を聴くと、ラジオではコテコテの関西弁でトークをしているのが分る。ルックスとのギャップが激しいが、本人かなり気さくで気の良いオネエチャンイメージなのだ。例によってドラマ内で常盤の衣装パターンは豊富。お嬢っぽいOLといった感じだったが、実はラーメン屋店員姿が庶民的でハマっていた。前作『私の運命』での看護婦姿に続き、一部マニアに向け確実なプレゼント・ヒットになった。

 奥菜はまた頭の良い不良役。デートクラブ、携帯電話での売春サポート(笹峰愛と共演)等々、週刊誌的リアルに固められ、逆に現実感が希薄になってしまった。この一見おとなしそうに見えて実は大胆(もしくは大人に理解できない行動をする)な役所が、最近彼女の定番になっている。『シンビーノジャワティストレート』の不思議チックCMも含め、「何か違う」と感じてしまうのだ。これは奥菜への期待感プラス「変」の種類が、所謂非行方面でしか演出されない事への不満から来るもの。テンポがずれて聴こえるセリフ。抑揚に乏しい、又は抑揚のつけ方が標準語的なニュアンスから少しズレる。どこに焦点が合っているかつかみにくい視線。などの要素から、不思議少女→多重人格犯罪娘→現代風俗取り入れ、てな図式が成立してしまうのであろう。しかし、チト安直ではないか?

 例えば内田有紀主演で『時をかける少女』(フジ系)がリメイクされている。劇中タイムトラベル能力を身につけた現実の役者はウソ臭く観える。もし、あの役が我等と同じ地面に足がついてなさそうな奥菜が演じれば、スッと「現実」の壁をのり超えてくれそうだ。歌手デビューに向けて超能力等、超現実的な役で夢を観せ、弾みをつけて欲しいものだ。

 次は三人組グループPinoのデビューシングル『イイじゃん』(日本コロムビア)の話題。エスキモーアイス『PINO』のCMソングであります。メンバーは小谷みさこ、長野かずえ、三宅えみのメンメン。小谷はTPD、桜っ娘クラブに在籍し、ミュージカル『セーラームーン』にも出演していたので、もうお馴染みでしょう。

 曲はカップリング共ラップを取り入れ遊びまくっている。高音と低音に一山づつ作ったドンシャリ録音。'78年ぐらいの洋楽テイストが目一杯のファンクだ。黒っぽいノリとぎゅわんぎゅわん鳴る古いギターアレンジが、当時のガール・ソウルグループを思わせる。流行とはいえ、高齢化したアイドルファンにターゲットを絞ったのだろうか。コレをリアルタイムで体験したのは、二十代後半以上だよなあ。歌詞世界はオジサン世代から見た今時の若い女の子が歌われている。ドライでクール。わがままでホントに自己中心。ラップ部分の現代風・平板なアクセント(例・パーティ)が日本語の乱れを憂えさせ、狙い通りかなりな軽薄ソングに仕上がった。さあ、みんなで聴いてゲンナリしよう(笑)。

 カップリング『I wanna be a STAR』。サエキけんぞう作詞。こちらは「誰でもスターになれる」とメッセージし、甘い考えの女の子と、芸能界のシステムをダブルで茶化している。この凝り方は尋常じゃないぞ。当初、CM商品と同じグループ名な事や、歴戦の強者・小谷の参加はあるが、やや即戦力に欠けるメンバー構成から、単発の企画物ユニットか、と思われたがCDで印象が一変した。70年代ファンキー路線でアルバム制作すれば面白くなるだろう。英語バージョンもお願いしたい。

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