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2003年3月号掲載
written by 桑原ナオミ

エビは好きですか@北青山

MINI COLUMN ダニエル・ラドクリフ来日会見


 資本主義国家・ニッポンにおける“行列”、それは肥大化した脳を持て余す人類が産み落としたドス黒い欲望である。読者諸君は犬やカラスやダンゴムシが行列しているのを見たことがあるかね? 人はなぜ行列するのか。先人の言葉を借りれば、こうだ。…「そこに、行列があるから」。

 で。この頃都内で行列しまくるお店といえば、香港・九龍島は尖沙咀にある人気デザートレストランの日本1号店・『糖朝』だ。行列も初物も大好物の桑原、雪に変わる一歩手前状態の冷たい雨が降りしきる師走の某日、青山通りをてくてく歩いて『糖朝』へ。このクソ寒い日に行列しているバカはいないだろうと余裕をかましていたのだが…、いるよ、バカが。しかもメスばかり7人。そんなにマンゴープリンやら杏仁豆腐が食いたいのかお前たちは! 店員に名前と人数を聞かれ、茶色の紙を渡される。「相席でよろしいですか?」イヤだなんて言ったら永遠に待たされそうだな。茶色の紙は、メニュー兼注文シート。本場スタイルでよろしい。オーナーであるミセス・ディジーこと洪翠娟が<医食同源>に基づく香港の伝統的甜品(デザート。温かいものと冷たいもの)約40種類をメインに点心・粥・フルーツ入り漢方ゼリー・特製マンゴープリン・大根餅・チャーシュー入り腸粉・鮑入り粥・蝦麺…。文字を追うだけでよだれがじるじる、胃酸がじわじわ。桑原を形成する数億の細胞が叫ぶ。「マンゴープリン!」が。“一品料理・ご飯”の欄を目にした桑原は、固まった。麻婆豆腐・酢豚・五目炒飯・ライス…!? これはいわゆる<ラーメン・餃子>の赤いのれんをくぐってカウンターに座り壁にはられたメニュー見ながら注文、店のおやじがラップでくるんだリモコンでテレビの音量を上げる。「今年の巨人、どーかねー」…な店のメニューだと思うのだが。どうなのよミセス・ディジー。余談だが、読者諸君は焼き肉屋でライスを注文するかね? オスは殆どが“ライス付”だが、桑原にはどうにも解せない。炭水化物が欲しいのならクッパとか冷麺とか食べれば? と思ってしまう。なぜ白いご飯でなければならないのか。この議題は後日深く追求したいと思う。に、してもだ。先程から桑原の鼻腔を著しく刺激する“甲殻類(エビ)臭”は一体…。2Fは空きテナントだし(行列させるなら2Fも『糖朝』にしろ)、地階はエステ。エステでエビは使わない(と思う)ので当然ニオイの元は『糖朝』ということに。確かにエビ系メニュー多かったけど、こんなに匂うかな〜?

 白い息をはきながら行列すること約20分、ようやく店内へ。ふが〜! エビくさ〜!! 鼻の穴に『かっぱえびせん』を詰め込んだらこんな感じ? というくらいの激しい“エビ臭”。知人に甲殻類アレルギーの人がいるけど、この店入ったらどうなるんだろう…。オフホワイト×ダークブラウンで統一された店内は、いかにも成熟したメスが好みそうなこじゃれつつも落ち着いた雰囲気。当然20代後半〜40代のメスどもでいっぱいだ。30代とおぼしき女性2人組と相席になる。彼女たちは既に終盤、けっこう酒が入っているらしく(ビール・杏露酒・紹興酒・カクテル・ワイン有)微妙に声がデカい。デザート食べまくって飲みまくって大声で喋りまくった後、「どっかでお茶していこうか〜」と言いながら去っていった彼女たちは、ある意味人生の勝者であるかもしれない(ちなみにこの時午後3時)。ここの名物メニューである豆腐花にフルーツ入り漢方ゼリー、特製マンゴープリン、大根餅・エビ入り腸粉・鮑と鶏肉入り粥・牛バラ肉入り香港麺に○をつけて、店員に注文シートを渡す。まずはお粥がくる。…でかい。カフェオレボウルくらいのサイズを予想していたのだが、ラーメンの器並の大きさ。しかし味はいい。680円からというお値段設定も嬉しい(鮑鶏肉入りは1600円だが…。領収書無しでは食べられません〜)。続いて麺。牛バラ肉という個性の強いお肉が愛らしく感じるほどの強烈な“エビ臭”とエビだしスープ。一体どんなエビ使ってるんだ!? とエビ入り腸粉を食べてみると、うう〜。す、すごい…「ぶりぶり」。エビちゃんがどんなモノを食べて大きくなるのかは知っているけど考えないようにしている桑原。だっておいしいんだもにょ〜。エビ好きに告ぐ。青山に来たら『糖朝』へ行け。大根餅も実に美味。広尾の香港ガー○ンはここで修行して更正するように。あまりのマズさにオープンキッチンに向かって中指立てたのは私です。そして。ほぼ全てのテーブルで注文している名物メニュー・豆腐花がきた。ふたを開けると、真っ白な固形物が「ぷるん」。蓮華ですくってつるりとひとくち。…んん? 豆腐にシロップがかかっているだけ?…? マズくはないけど何か物足りない。漢方ゼリーもマンゴープリンも美味しいが、最高峰というレベルではない。甜品がメインのはずだが…。店の看板にも“THE SWEET DYNASTY”って書いてあるし。桑原的には"THE PRAWN(SHRIMP?)DYNASTY”って感じだけど。そこんとこどうなのよミセスディジー。

 香港で人気の"デザート”レストラン『糖朝』。エビのおいしいお店です。

 みにこらむ

世界一有名な13歳の来日会見に潜り込む

 ドラマは全く観ないし映画館にも行かない桑原だが、大ヒット作『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は観てしまった。たまには食べたくなるのよ、ワーナー・マイカルのポップコーン。バケツみたいな容器を抱えてもぎゅもぎゅ食べながら観るにはいい映画だった。通勤電車とかでカバー無しで原作本読んでる人見ると何だかなあ、って思うけど。

 そんな桑原が、なぜか主演のダニエル・ラドクリフ君の来日会見に潜り込んでしまった。このクラスの有名人になると、生で見るだけで希少価値があるというもの。1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』のサテライト会見の時は“大入り”祝いに特製スタンド時計が配られたというし、今回も何か貰えるかも。そしたらヤフオクで売ってカードの返済に…。

 来日会見の場としては最もメジャーだという帝国ホテル(最近は新宿パーク・ハイアットホテルが多いとか)。受付前にはナルミヤ・ファッションのガキがうじゃうじゃ。劇中のコスプレしてる奴までいる。著しく邪魔。逮捕するぞ!「会見場にファンが詰めかけることは殆ど無い」とは本誌映画担当の渡辺嬢の弁。しかも成田空港に到着した際には3000人のファンが“入り待ち”したというから凄い。受付を済ませ会場内に入ろうとすると、係員に呼びとめられた。「プレス用のシールを貼ってっ下さい」…目の前のジジイはシール無しでもスルーしたのになぜ!? 潜り込んでいることは事実だが…。かなり広い会見場の中にはイスがびっしりと並び、その後ろには30台近いテレビカメラがずらり。前方では既にカメラマンたち(こ汚い人多し。彼らの辞書にTPOという言葉はない)が陣取り抗争を繰り広げている。あの中に入るのはちょっとこわいな…。

 そして。報道陣600人(!)が待ち構える中、主人公ハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフとプロデューサーのディビッド・ヘイマンが登場。ダニエル君はブルーのストライプ・シャツにジーンズというラフなファッション。日本語を覚えてきたので…と前置きしたあと、「日本のみなさん、こんにちは。ダニエル・ラドクリフです。日本に来ることができて大感激です。」と日本語で挨拶。こんな長い文章を…。ごくろうさま。映画よりも大人っぽい雰囲気だけど、“世界一有名な13歳”というより“何だかわからないけど引っ張り出された”という感じ。この先やってみたいことは?と聞かれ「アニメ『シンプソンズ』の声優がやりたい! どの役でもいい、一言だけでもいいからやらせて!!」と微笑ましい応答をする一方で、この映画に出演したことで自分自身に変化があったか? という質問に「色々な事があったけれど、自分自身は成長過程にある10代なので、このことが無くても何らかの変化はしたと思います」と答える13歳らしからぬ一面も。会見後のフォト・セッションで、もう何度もこういった場面を経験しているだろうにも拘わらず何だか慣れていない感じで、どうにも“借りてきた猫”状態だったのが印象的だった。スレずにこのまま成長して欲しいもんですな。

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