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2001年1月号掲載
written by 桑原ナオミ

さらば20世紀、さらばバッファロー。知る人ぞ知るアレが、ついにというかやっぱりというか閉店なわけで。

『近鉄百貨店』 MINI COLUMN「シナボン」


 ♪きっと君はこないぃ〜♪♪ああそうさ。桑原は今年も”ひとりきりのクリスマスイヴ”さ。12月24日25日といえば家にこもってひたすら原稿! 徹夜で原稿!! 朝まで原稿!!! 20世紀最後の聖夜だというのにオトコはおろかフロにすら満足に入れないロンリー・ビター(ダーティ)?・クリスマスになることほぼ当確の桑原。24日の深夜(25日の早朝ともいう)にジャージ姿でコンビニ行って肉まん1個とか買ったりするとさ〜、レジの男が「オレよりヒサンなヤツがいるぜウヒャヒャ」みたいなカオすんのよ〜。ほっとけ! そんな桑原の唯一のお楽しみは、12月26日にスーパーで半額のシールの付いたクリスマスブーツを買うこと。いろんなお菓子が入ってるから毎年ドキドキ。人間ここまで堕ちればこわいものなんてございませんわ。

 で。そこから更に1週間後には、ついにきちゃった21世紀である。どうでもいいけど、どうすんの20世紀FOX。日本でも明治製菓とか大正製薬とか江戸むらさきとか(違う?)あるからいいんだろうけど、あと5年くらいはかなりカッコ悪いかも。

 そして。光あるところには影が生まれるのが世の常というもの。来る21世紀を目前に控え、その名を残すことなく消えていこうとするモノたちがいる。

 近鉄百貨店東京店、その名を聞いて、正確な所在地を提示できる日本人が果たして何人いるだろうか。”東京”とは都の名称だが、と同時に中央区八重洲にある駅名でもある。また”東京”という区名や町名は存在しないが、駅周辺を”東京”と呼ぶこともあり、東京駅の真上にある大丸東京店はすでに広く人々に認知されている。しかし。近鉄百貨店東京店は東京駅から32分の武蔵野市は吉祥寺にある。23区内じゃないとはいえ吉祥寺だって立派な東京都。だからこの表記は間違いではないんだけど…。なんか納得がいかないのよねぇ〜。大阪の人だって百貨店の”大阪店”が羽曳野とか茨木とかにあったら「ハァ?」って思うでしょ。

 で。その力技表記が影響したのかしなかったのか、近鉄百貨店東京店は来年2月20日をもって閉店することになった。一応21世紀まで存続してはいるが、百年の内の51日なんてあって無いようなもの。それなら思い切って12月31日閉店にすればよかったのに〜。肝っ玉小さいぞ、バッファローズ。

 ということで吉祥寺である。吉祥寺は北口に近鉄・伊勢丹・東急、南口に丸井を有する地元密着型の街だ。新宿にも渋谷にも電車1本で行けるし井の頭公園も近いし住むにはイイところかな。ちなみに駅前の不動産屋をのぞいたところ風呂なし木造なら4万4千円から。ちょっとくたびれ気味の駅ビル『ロンロン』(なぜここのトイレにはペーパーホルダーが3つもあるのでしょうか?)や駅前のアーケード商店街『サンロード』の誘惑を振り切り、吉祥寺本通りを少し歩いたところに近鉄百貨店東京店はある。緑・白・赤のしましまライトが少々あやしげだが、店の顔ともいえる正面入口横のテナントは『マックスマーラ』に『ミキモト』、こじゃれワインショップ『エノテカ』に『日比谷花壇』と、”コマダム”臭プンプン。浜田山あたりからBMWで乗り付けて外商サロン直行、品物は宅まで届けてちょうだいネ、ってカンジ? エントランスもウッドデッキだし、こ・じゃ・れぇぇ〜。期待(ていうか黒い欲望?)を胸に店内へと入る。全体が見渡せるくらいの比較的小さなフロア。奥には小金持ちの定番『パパス&ノンノン』と『パパス・カフェ』が。うう〜ん、こ・じゃ・れぇぇ〜。パパスってさぁ、服でもお茶でもどうってことないのに妙に高いのよね〜。と。『パパス・カフェ』の裏になぜか『西友』のカートと買い物カゴが放置されている。確かに近鉄の斜め前に『西友』はあるが、まさかあそこから引っ張ってきたのか? デパートってカートで入れるの?? 桑原が某百貨店でバイトしてた時にはお風呂掃除用のゴムスリッパで来てる客がいたけど…。そして、Wパパスを抜け道路を挟んだ向かい側にあるのが東館”近鉄アウトドアスクエア”。名前はご立派だが実態はただのボロい雑居ビル。しかも使用しているのは1Fのみのようだ。お隣の『本町コミュニティーセンター』が哀愁を誘う。ちなみに別館”19ショップ”はどこにあるのかわからず。フロアガイドにもどんなテナントが入っているのかなどが一切明記されていないのでこの別館については全くもって不明。近鉄百貨店東京店、なにやら謎めいた店である。

 本館に戻り上階へ。2Fは雑貨&婦人用品のフロア。ありゃ? 1Fに充満していた”コマダム”&”こじゃれ”臭が”おばさん”臭になってるぅ〜。だってだって、バックがゴブラン織りなんですもの。ティペットじゃなくてフォックスマフラーなんですもの。それなのになぜかその奥には『アルマーニ ジーンズ』、こじゃれ雑貨の老舗『F.O.B COOP』&『cafe de F.O.B』が。しかし、カフェ・オ・レの湯気の向こうに”絹の5本指くつした”(¥1000)のワゴンが見える『F.O.B』って…。一体ナニをどうしたいんだ近鉄百貨店東京店!

 3Fは婦人服のフロア。いや〜ん、人がいないわぁ〜。休日の午後だってのに、何でこんなに客がいないのぉ〜。フロアガイドには”いつも新鮮な(←近鉄のお気に入りコピーらしい)3階は、デザイナーズブティック・キャラクターズ アダルトカジュアル(?)のフロアです”って書いてあるけど『君島一郎』の『ユキトリイ』の『花井幸子』のどこが新鮮なんじゃい!

 4Fは婦人服と宝飾品のフロア。いや〜ん、更に人がいないわぁ〜。店員さんが卒塔婆のように立っている((c)西原理恵子)わ〜。奥の『サロン・ド・テ・モロゾフ』が気になるけどそこまでたどり着けないわ〜。

 逃げるように5Fへ。5Fはメンズファッションのフロア。3〜4Fに比べると客は多いが、やはり休日の午後にしては少なめだ。

 6Fは家庭用品のフロア。『葉山ガーデン』の家具&インテリアコーナーがあったりして、どうにもこ・じゃ・れぇぇ〜。『葉山ガーデン』というのはお葉山とかお元町なんかにあるお上品なお店でしてよ。現在セール中らしくお得な品も。ちなみに天使の置き物は¥6000が¥5000。両手をあわせた”お願い”ポーズが「売れ残りはイヤ! 誰か買って!!」と言っているようでちょっぴり鼻ツン。25歳にもなると他人事とは思えなくってね…。今年もひとりでクリスマスだし。でもこのフロアはオンナどもが好きそうなこまごましたどうでもいいものが充実していて、見ているだけでけっこう楽しい。本当に見てるだけなんだけど。

 7Fは催事場。この季節定番のお歳暮ギフトセンターになっている。いや〜ん。ここにも人がいないわぁ〜。仮説休憩室に置かれたテレビから流れる『笑点』の陽気な音楽が人気のないフロアにひびいてるわぁ〜。

 8Fはレストラン街。全部で7店舗あるのだが、『銀座 すし栄』だけが盛況。桑原がこの日初めて目にする”混雑”と”行列”。メニューをみるとふぐ懐石2万円〜とかけっこうなお値段。吉祥寺市民ってけっこうゼニ持ってるのね。

 近鉄を出て、本町新道を進むと『伊勢丹 吉祥寺店』が。ちょっとのぞく。ああ、若いお嬢さんがわんさといるわ。カップルどもがわんさといるわ。クレージュの新作バッグがあるわ。行列のできるデパ地下スイーツがあるわ。近鉄百貨店東京店にないものがみんなあるわぁ〜。

 近鉄百貨店の”過ち”は、吉祥寺にありながら”東京店”という非常にあやふやな(?)名称を付けてしまったことから始まっているように思える。関東での知名度の低さや店の規模を考慮せず、こじゃれにもコマダムにもおばちゃんにも手を出した結果、名前と同じ”あやふや”な、ナニをどうしたいのかわからない店になってしまった。本店であり時としてライバルでもある『伊勢丹 新宿本店』が電車で20分弱の距離にある『伊勢丹』や、同じく近距離に本店や専門館を抱える『東急』『丸井』の持つ危機意識や営業努力が果たして近鉄にはあっただろうか。

 見知らぬ土地に迷い込んだ水牛は、激しい生存競争を生き抜くことができなかった。さよらバッファロー。閉店セールで骨は拾ってやるからなー。あっ。でも買うモノないかも…。

ミニコラム

吉祥寺スイーツ。

 『パステル』 のなめらかプリンや『新宿高野』のメロンパン…。今年も様々なスイーツたちが欲深いオンナどもの体脂肪の増加に貢献したが、その中でも一切個性的だったのが、アメリカ生まれの巨大シナモンロール”シナボン”。今や”お台場スイーツ”の定番になりつつあるこぉのシナボンだが、その日本上陸第1号店が、吉祥寺駅前のアーケード商店街『サンロード』内にあることを知る人は意外と少ない。

 元祖シナボンを販売するその名も『シナボン』は、サンロードの中程にある。桑原がくだんの近鉄百貨店東京店経由伊勢丹吉祥寺店の帰りに立ち寄った時には、既に10人以上の行列ができていた。1歩店に入るとキョーレツなシナモンの匂いが鼻孔を襲う。実はシナモンがニガテな桑原にとってはプチ拷問…。おえ〜。シナボンは店内のオープンキッチンでつくられ、常にできたてほやほやが提供される。10代〜20代のおねちゃんたちがキビキビと生地を巻き上げ、発酵させ、オーブンで焼き、トッピングしている姿が待ち時間の退屈(とシナモンン酔い)をやわらげてくれる。スタンダードサイズのシナボン(といっても男性の握りこぶしよりデカい)は1個¥370、クリームチーズのかわりにクラッシュナッツとソースをトッピングしたビーカンボンは¥400。以上。ドリンクは色々あるけど、あくまでシナモンロールだけで勝負している店になのだ。『コロちゃんのコロッケ屋』より気合いが入ってるぞ、これは。伝説のシナモンといわれるマカラシナモンがたっぷり入ったブラウンシュガ〜。つまり、くどいぃ〜。ピーカンボンはもっとくどいぃぃ〜。ハイカロリィ〜。濃い系の味がニガテな人はひとまわり小さいミニボンで十分。確かに後ひく味ではるけど、食後のデザートにはちと重いわね…。キミも吉祥寺で体脂肪アップ!

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